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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
2章

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甘味漫遊記3:千夜の月影羊羹日記

今日は月影坂で「月影羊羹」を食べました。淡い黄色の層と白い層が重なり、切り口はまるで夜空に浮かぶ半月のよう。手に取ると光を受けてほんのり輝き、夜の静けさに溶け込むようでした。口に入れるとやさしい甘さが広がり、心がすっと落ち着いていきます。


町の人たちはこの羊羹を「静寂の羊羹」と呼んでいて、食べると心が穏やかになり、夜を静かに過ごせるんだそうです。お店のおばあさんも「これを食べると月影に寄り添う気持ちになるよ」と笑っていました。確かに、羊羹を味わいながら夜空を見上げると、月の光が一層やさしく感じられました。


月影坂は夜になると人通りが少なく、石畳に月明かりが降り注ぎ、旗が風に揺れる音だけが響いていました。そんな中で食べる月影羊羹は、まるで町全体が「おやすみ」と囁いているようで、心がふわっと温かくなりました。


……でも、気づけば風音が花びら羊羹を片手にこちらを見ていて、「交換しよう」と言われてしまいました。私は月影羊羹を半分渡して、代わりに花びら羊羹を受け取ることに。月影羊羹の静けさと花びら羊羹の華やかさが重なって、夜の広場に不思議な調和が生まれました。日記には「月影羊羹、半分は風音の花びら羊羹と交換」と書いておこうかな。少し不思議だけど、こうして分け合うのもまた静寂の形なのかもしれません。


夜はさらに深まり、広場は静けさを増していきます。旗は月光を受けて揺れ続け、町の安心を見守っていました。月影羊羹の甘さは、夜の余韻とともに心に残り、未来へと続く道を静かに照らしているようでした。

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