ep.36.5 慰労回・しゅうまい発見!
札場依頼を終えた夜、温泉町の通りは提灯の灯りと湯気に包まれていた。 果林が鼻をひくつかせる。 「なんだか、団子や芋とは違う匂いがするよ」
咲姫のしっぽがぴんと立った。 「肉の香りなのです! 珍しい食べ物なのです!」
屋台には蒸籠が並び、ふっくらとした「しゅうまい」が湯気の中で輝いていた。 ユウマは目を丸くした。 「団子でも芋でもない……これは、しゅうまい?」
屋台の主人が笑って差し出す。 「温泉の湯で蒸した特製しゅうまいだよ。肉の旨みと湯気の香りが染み込んでる」
咲姫は勢いよくかぶりつき、目を輝かせた。 「じゅわっと肉汁なのです! 団子よりも濃厚なのです!」
果林も一口食べて、思わず頬を緩めた。 「これは……温泉町ならではの味だね。体の芯まで温まる」
ユウマも挑戦したが、熱々をそのまま口に入れてしまい、慌てて吹き出した。 「熱っ……!」
果林が慌てて冷たい湯上がり牛乳を差し出す。 「ほら、これで冷まして!」 紗綾は札をかざし、風を送った。 「落ち着いて。問いの風は、食べ方にも宿るのよ」
――
屋台の周りには村の子どもたちも集まってきた。 「旅人さん、しゅうまい好き?」 「うちの畑の玉ねぎも入ってるんだよ!」
咲姫はしっぽを揺らしながら笑った。 「玉ねぎの甘さが広がるのです! 団子や芋とは違うけど、これも旅の味なのです!」
果林は子どもたちに微笑みながら言った。 「食べ物って、ただお腹を満たすだけじゃないんだね。人の気持ちも一緒に届くんだ」
ユウマはしゅうまいをもう一口食べ、胸の奥が温かくなるのを感じた。 「団子も芋も、温泉も……そしてしゅうまいも。全部が旅の力になる」
紗綾は札を胸に抱え、静かに言葉を添える。 「慰労の問いは、こういう時間にあるのかもしれないわね。癒しの後に味わう珍味、それも旅の一部ね」
――
夜更け、屋台の灯りが揺れる中、ユウマたちはしゅうまいを囲んで笑い合った。 失敗もあったが、仲間と分け合えば温かさに変わる。 問いの風は、慰労の時間にも吹いていた。
「旅は厳しい。でも、こういう慰労があるから続けられる」 ユウマの言葉に、三人娘はうなずいた。
咲姫は最後のひとつをしっぽでつまみ、満足そうに笑った。 「しゅうまいは、温泉町の宝なのです!」
――
こうして、札場依頼を終えた彼らは珍しい「しゅうまい」を楽しみながら、次の旅路へと心を整えていった。
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