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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
2章

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甘味漫遊記1:千夜の月輪焼き日記

今日は月輪坂で「月輪焼き」を食べました。丸い形に月の模様が描かれていて、手のひらに乗せるとまるで夜空に浮かぶ満月を抱いているようでした。外は香ばしく、中にはやさしい白あんが詰まっていて、口に入れるとふわっと広がる甘さが心を静かに満たしてくれます。夜の空気と重なって、まるで月そのものを味わっているような気持ちになりました。


町の人たちはこの焼き菓子を「安らぎの焼き菓子」と呼んでいて、食べると心が落ち着き、夜を穏やかに過ごせるんだそうです。お店のおじさんも「これを食べると月を見上げたくなるよ」と笑っていました。確かに、焼き菓子を食べながら夜空を見上げると、月の光が一層やさしく感じられました。


月輪坂は静かな場所で、昼間の賑わいがすっかり消え、夜になると人通りも少なくなります。石畳に月明かりが降り注ぎ、旗が風に揺れる音だけが響いていました。そんな中で食べる月輪焼きは、まるで町全体が「おやすみ」と囁いているようで、心がすっと落ち着いていきました。


……でも、気づけば果林が団子を片手にこちらを見ていて、「交換しよう」と言われてしまいました。私は月輪焼きを半分渡して、代わりに桔梗団子を受け取ることに。桔梗団子のやさしい甘さと月輪焼きの静かな甘さが重なって、夜の広場に不思議な調和が生まれました。日記には「月輪焼き、半分は果林の団子と交換」と書いておこうかな。少し不思議だけど、こうして分け合うのもまた安らぎの形なのかもしれません。


夜はさらに深まり、広場は静けさを増していきます。旗は月光を受けて揺れ続け、町の安心を見守っていました。月輪焼きの甘さは、夜の余韻とともに心に残り、未来へと続く道を静かに照らしているようでした。

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