ep.33 道中の風
冬の道は冷たく、足元の土は固く凍っていた。 吐く息は白く、歩みを進めるたびに風が頬を刺す。 けれど、その風はただ冷たいだけではなく、問いを含んでいるように感じられた。
咲姫のしっぽが風に反応して揺れる。 「問いの風が、道にもあるのです」
果林は笑いながら肩をすくめる。 「団子の町を出たばかりなのに、もう次の問いが待ってるんだね」
紗綾は静かに札を取り出し、風にかざした。 「札場だけじゃない。旅の途中にも問いはある。私たちがどう歩くか、それも試されている」
ユウマは黙って歩きながら、昨日の団子の香りを思い出していた。 失敗しても笑ってくれる仲間、支えてくれる町の人々。 その温かさがあるから、冷たい風にも耐えられる。
道の途中、小さな村の子どもたちが手を振ってくれた。 「旅人さん、がんばって!」 その声は風に乗り、背中を押すように響いた。
咲姫がしっぽを揺らしながら笑う。 「旅は厳しいけど、こういう声があると温かいのです」
果林は空を見上げる。 「冬の空って、澄んでるね。問いの風も、まっすぐ届いてくる感じがする」
紗綾は札を胸に抱え、静かに言った。 「風は厳しさを運ぶ。でも、同時に支えも運んでくれる」
ユウマは深く息を吸い込み、冷たい空気を胸に刻んだ。 「旅は厳しい。でも、問いの風があるから進める」
――
道中の風は、ただ冷たいだけではなかった。 それは問いを含み、仲間の絆を確かめる風でもあった。 ユウマたちはその風を受けながら、次の札場へと歩みを進めていった。




