ep.32 出発準備と挨拶
町の朝は冷たい風に包まれていた。 けれど、団子屋の前にはまだ昨日の香りが残っていて、ユウマたちの心を温めていた。
果林が荷物をまとめながら言う。 「いよいよ出発だね」
咲姫はしっぽを揺らしながら、町の人々に手を振った。 「お世話になったのです!」
紗綾は静かに札を胸に抱え、深く頭を下げる。 「問いの風を教えてくださって、ありがとうございました」
団子屋の店主が笑顔で近づいてきた。 「焼き団子の挑戦、忘れないよ。次に戻ってきたときは、もっと上手く焼けるだろうな」
ユウマは少し照れながら答える。 「はい。必ず成長して戻ってきます」
町の子どもたちも駆け寄ってきた。 「また団子焼いてね!」 「今度は焦げないやつ!」 笑い声が冬の空気をやわらげる。
荷物を背負い、町の門へと歩き出す。 道の両側から、町の人々が声をかけてくれる。 「気をつけてな」 「風に導かれて行くんだよ」
ユウマは胸の奥に温かさを感じた。 旅は厳しい。けれど、人の温かさが背中を押してくれる。
果林が振り返り、町の灯りを見つめる。 「また戻ってこようね」
咲姫も笑ってうなずく。 「団子の町は、わたしたちの出発点なのです」
紗綾は静かに言葉を添える。 「問いの風は、ここから続いている」
ユウマは深く息を吸い込み、前を向いた。 「行こう。次の札場へ」
冬の空気は冷たいが、心は温かい。 町の人々の笑顔と団子の香りが、確かに彼らの旅立ちを支えていた。
――
こうして、ユウマたちは町を後にした。 背中には荷物と、温かい記憶。 前には、まだ見ぬ札場と新しい挑戦。
旅の厳しさと町の人の温かさ。 その対比を胸に刻みながら、彼らは歩き出した。
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