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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
1章

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ep.24 場面のほころび

風が、ふっと動いた。 ほんの少しだけ、空気がずれた気がした。


「……風が笑ってるのです!」


咲姫が立ち上がる。 猫耳飾りが、風に合わせて揺れた。


「空間が、少しずれてる」


紗綾が札帳を開いたまま、周囲を見渡す。 地面の模様が、ほんの少しだけ違って見えた。


「団子の影が、さっきより長い」


果林が串を見つめながら言う。 その声は、風の揺れと重なっていた。


「時間が、ずれてる?」


「ううん。場面が、ほころびはじめてる」


主人公は、風の中に立っていた。 その匂いは、さっきまでと違っていた。 焙じ茶でも、団子でもない。 もっと遠くて、懐かしい匂い。


「……この匂い、前に嗅いだことある」


ミナがぽつりと言う。 その声は、風の隙間にすっと溶けていった。


「でも、いつだったか思い出せない」


「それが、“場面のほころび”なのかも」


「うん。記憶が、風に混ざってる」


札帳の印は、まだ問いのまま。 でも、その輪郭が少しだけ揺れていた。 まるで、次の場面を探しているように。


「猫神様の“遊び心”なのです!」


咲姫が印を指さす。 紗夜は筆を持ったまま、動かさない。


「でも、札帳が“場面”に反応するなんて、初めて」


「じゃあ、次の札は“場所”じゃなくて“空気”なのです!」


「空気って、どうやって探すの?」


「風が教えてくれるのです!」


果林は、串をそっと地面に置いた。


「じゃあ、団子も空気にまかせる」


「団子はいつも風まかせなのです!」


「でも、香りは残ってる」


風が、もう一度ふわりと動いた。 その瞬間、空気が少しだけ“裂けた”ように感じた。


主人公は、足元を見つめた。 石畳の隙間が、ほんの少し広がっていた。


「……ここから、場面が変わるかも」


ミナがそっと言う。 その声は、風の先に向かっていた。

最後まで読んでくださって、ありがとうなのです〜 感想やアドバイス、そっといただけたら嬉しいのです。 ★やリアクションで応援してもらえると、咲姫のしっぽがぽわぽわ揺れるのです〜 のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いしますのですっ!

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