ep.111 眠りの記憶、森の核心
森の最深部―― 淡い光の風は、咲姫の周りを静かに巡っていた。
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! なんか……胸の奥がざわざわするのです……!」
風音 「……“封じられた風”が、咲姫に記憶を見せようとしてる」
風花 「怒ってないよ。 むしろ……“伝えたい”って感じだねぇ」
果林 「団子も伝えたいって言ってるよ~」
咲姫 「団子は伝えないのですーー!!」
光の風は、 咲姫の額にふわりと触れた。
……ふわぁぁぁ……
視界が揺れ、 咲姫の頭の中に“知らない景色”が流れ込んだ。
(咲姫の内側・風の記憶)
――森が歌っている。 ――風の子どもたちが遊んでいる。 ――祈りの声が響いている。
そして―― “封じられた風”が、森を守っている姿。
咲姫 「ひゃぁぁぁ……!? な、なんか見えたのですーー!! 森さんの……昔の姿なのですーー!!」
風音 「……咲姫。 “封じられた風”は、森を守る存在だった」
咲姫 「守るって…… じゃあ、悪い子じゃないのです……?」
風花 「そうだねぇ。 でも、何かの理由で“眠らされて”しまったんだよ」
紗綾 「……猫は“外からの力”と言っています」
オグマ 「外から……? つまり、森の異変は内部ではなく外的要因か」
冒険者A 「そんなことが……」
冒険者B 「じゃあ、敵は森の外に……?」
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! 外って……もっと怖いのですーー!!」
光の風は、 咲姫の周りを巡りながら、 まるで“頼るように”揺れた。
風の魂 「……咲姫…… “助けて”……」
咲姫 「ひゃっ……!? ま、また頼られてるのですーー!! でも……がんばるのです……!」
森の核心に、 咲姫の風と“封じられた風”の記憶が重なり合った。
まるで―― 真実へ近づいているかのように。




