ep.110 風に選ばれる咲姫
森の最深部―― 淡い光の風は、咲姫の前で静かに揺れていた。
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! まだ見られてるのです……!」
風音 「……咲姫。 “封じられた風”が、もっと話したがってる」
風花 「怒ってないよ。 むしろ……“頼りたい”って感じだねぇ」
果林 「団子も頼りたいって言ってるよ~」
咲姫 「団子は頼らないのですーー!!」
光の風は、 咲姫の周りをふわりと巡り、 まるで抱きしめるように包み込んだ。
風の魂 「……咲姫…… “守る風”…… あなたは……選ばれし者……」
咲姫 「ひゃっ……!? 選ばれたくないのですーー!!」
風音 「……咲姫。 “封じられた風”は、 お前を選んだ」
咲姫 「選ばれなくていいのですーー!! 私、ただの咲姫なのですーー!!」
紗綾 「……猫は“風の継承者”と言っています」
オグマ 「継承者……? つまり、咲姫が“封じられた風”を解放する鍵か」
冒険者A 「すごい……」
冒険者B 「まさか、咲姫ちゃんが……」
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! そんな大役は困るのですーー!!」
風花 「でもねぇ、咲姫ちゃん。 この子(欠片)も咲姫ちゃんに懐いてるでしょ? それが答えなんだよ」
影 「……ぴ……」
咲姫 「ひゃっ……!? な、なんか……“よろしく”って聞こえたのです……!」
風音 「……咲姫。 風は“あなたと一緒に歩みたい”って言ってる」
咲姫 「歩まなくていいのですーー!! でも……がんばるのです……!」
森の最深部に、 咲姫の風と“封じられた風”が重なり合った。
まるで―― 新しい絆が結ばれたかのように。




