ep.109 風との対話、なのです
森の最深部―― 淡い光の風は、ゆっくりと形を取り始めていた。
咲姫 「ひゃっ……!? な、なんか……人みたいな形になってるのです……!」
風音 「……“封じられた風”が姿を見せてる」
風花 「怒ってないよ。 むしろ……“話したがってる”」
果林 「団子も話したがってるよ~」
咲姫 「団子はしゃべらないのですーー!!」
光の風は、 咲姫の前にふわりと漂い、 まるで声を持つように震えた。
風の魂 「……ありがとう……」
咲姫 「ひゃぁぁぁ……!? しゃ、しゃべったのですーー!!」
風音 「……咲姫。 “封じられた風”が、直接語りかけてる」
咲姫 「語りかけなくていいのですーー!! 私、ただの咲姫なのですーー!!」
風の魂 「……ただの……咲姫…… でも……“守る風”……」
咲姫 「ひゃっ……!? な、なんで知ってるのです……!」
風花 「咲姫ちゃんの風、ちゃんと届いてるんだよ。 だからこの子も応えてる」
紗綾 「……猫は“共鳴”と言っています」
オグマ 「なるほど。 咲姫の風と“封じられた風”が共鳴しているのか」
冒険者A 「すごい……」
冒険者B 「まるで精霊と話してるみたいだ……」
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! 私、そんな大役は困るのですーー!!」
風の魂 「……咲姫…… “助けて”……」
咲姫 「助けてって…… 私、そんなに頼られても困るのですーー!!」
風音 「……咲姫。 この風は“眠りから解放されたい”って言ってる」
咲姫 「解放って…… また鍵なのですーー!!」
小さな影は、 咲姫の足元に寄り添い、 風の魂を見上げた。
影 「……ぴ……」
風の魂 「……欠片…… 戻れば……“完全”に……」
咲姫 「ひゃっ……!? この子が……鍵なのです……?」
風花 「そうだねぇ。 “封じられた風”を解放するための欠片なんだよ」
咲姫 「うぅ…… 怖いのです…… でも……がんばるのです……!」
森の最深部に、 咲姫の風と“封じられた風”が重なり合った。
まるで―― 新しい対話が始まったかのように。




