ep.107 森の最深部、風の兆し
森の奥へ進むと、 空気はさらに冷たく、 風はまるで眠りから目覚めるように揺れていた。
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! なんか……重いのです……!」
風音 「……“封じられた風”の気配が強くなってる」
風花 「咲姫ちゃんの風も、ちょっと震えてるねぇ」
果林 「団子の袋も震えてるよ~」
咲姫 「団子で判断しないでほしいのですーー!!」
小さな影は、 咲姫の足元をとことこ歩き、 森の最深部を指さすように前足を伸ばした。
影 「……ぴ……!」
紗綾 「……猫は“ここが入口”と言っています」
咲姫 「入口って…… また封印なのです……?」
オグマ 「いや、これは封印ではない。 “本体の領域”だ」
冒険者A 「本体……?」
冒険者B 「じゃあ、ここに……?」
咲姫は胸の奥に手を当て、 そっと目を閉じた。
……ふわっ。
咲姫 「ひゃっ……!? な、なんか……見えるのです……!」
視界の奥に、 淡い光の風が揺れていた。
風音 「……咲姫。 “封じられた風”の本体が近い」
咲姫 「近いのですーー!? そんなの聞いてないのですーー!!」
風花 「でもねぇ、咲姫ちゃん。 その風、怒ってないよ。 “会いたがってる”」
咲姫 「会いたがってるって…… 私、ただの咲姫なのですーー!!」
小さな影は、 咲姫の足元に寄り添い、 森の奥へと歩き出した。
影 「……ぴ……」
咲姫 「ひゃっ……!? ま、待つのですーー!!」
森の最深部から――
……ふわぁぁぁ……
“古くて深い風”が吹いた。
まるで―― 咲姫たちを迎えるように。




