ep.105 封じられた風、目覚めるのです
木の根元に浮かぶ“風の紋様”は、 ゆっくりと脈打つように光を放っていた。
咲姫 「ひゃっ……!? な、なんか……光が強くなってるのです……!」
風音 「……咲姫の風に反応してる。 “封印が開く”」
咲姫 「開かなくていいのですーー!!」
風花 「でもねぇ、咲姫ちゃん。 この光……怒ってないよ。 “助けてほしい”って言ってる」
咲姫 「助けてって…… 私、そんなに頼られても困るのです……!」
小さな影は、 咲姫の足元に寄り添い、 光の前にちょこんと座った。
影 「……ぴ……」
咲姫 「ひゃっ……!? な、なんか祈ってるのです……!」
紗綾 「……猫は“儀式”と言っています」
オグマ 「儀式……? この子は封印と関係があるのか」
風音 「……“欠片”だから」
咲姫 「欠片って…… そんな大事な子だったのです……?」
風花 「咲姫ちゃんの風に懐いたのも、 きっと理由があるんだよ」
果林 「団子も懐いてるよ~」
咲姫 「団子は懐かないのですーー!!」
そのとき――
……ふわぁぁぁ……
光が一気に広がり、 森の空気が震えた。
咲姫 「ひゃぁぁぁぁぁ……!! な、なにが起きてるのですーー!!?」
風音 「……咲姫、風を乱すな。 “封じられた風”が出てくる」
咲姫 「出てこなくていいのですーー!!」
木の根元から、 ゆっくりと“風の粒子”が舞い上がった。
それは形を持たず、 ただ淡い光の風として揺れている。
冒険者A 「な、なんだ……あれ……」
冒険者B 「精霊……? いや、違う……もっと古い……」
風花 「咲姫ちゃん、見て。 あれ……“風の魂”だよ」
咲姫 「魂なのですーー!? そんなの聞いてないのですーー!!」
風音は静かに言った。
風音 「……“封じられた風”の本体。 名前は……まだ思い出してない」
咲姫 「名前……?」
風音 「……でも、咲姫の風を見てる。 “助けてくれるのか”って」
咲姫 「ひゃっ……!? そんな目で見られても困るのですーー!! 私、ただの咲姫なのですーー!!」
小さな影は、 その風の魂にそっと触れた。
影 「……ぴ……」
風の魂 ……ふわ……
咲姫 「ひゃっ……!? な、なんか…… “ありがとう”って聞こえたのです……!」
風音 「……うん。 “目覚めた”って言ってる」
オグマ 「封印が解けたということか」
紗綾 「……猫は“まだ半分”と言っています」
咲姫 「半分なのですーー!? まだ続くのですーー!!?」
風音 「……咲姫。 “封じられた風”は、 まだ完全には戻ってない。 “欠片”が必要」
咲姫 「欠片って…… この子なのです……?」
影 「……ぴ……」
風花 「咲姫ちゃん。 この子と一緒に行けば、 “封じられた風”の本当の場所に行けるよ」
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! ま、また奥に行くのですーー!!?」
オグマ 「行くぞ。 ここからが本番だ」
森の奥から、 “古くて深い風”がふわりと吹いた。
まるで―― 咲姫たちを導くように。




