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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.105 封じられた風、目覚めるのです

木の根元に浮かぶ“風の紋様”は、 ゆっくりと脈打つように光を放っていた。


咲姫 「ひゃっ……!?  な、なんか……光が強くなってるのです……!」


風音 「……咲姫の風に反応してる。  “封印が開く”」


咲姫 「開かなくていいのですーー!!」


風花 「でもねぇ、咲姫ちゃん。  この光……怒ってないよ。  “助けてほしい”って言ってる」


咲姫 「助けてって……  私、そんなに頼られても困るのです……!」


小さな影は、 咲姫の足元に寄り添い、 光の前にちょこんと座った。


影 「……ぴ……」


咲姫 「ひゃっ……!?  な、なんか祈ってるのです……!」


紗綾 「……猫は“儀式”と言っています」


オグマ 「儀式……?  この子は封印と関係があるのか」


風音 「……“欠片”だから」


咲姫 「欠片って……  そんな大事な子だったのです……?」


風花 「咲姫ちゃんの風に懐いたのも、  きっと理由があるんだよ」


果林 「団子も懐いてるよ~」


咲姫 「団子は懐かないのですーー!!」


そのとき――


……ふわぁぁぁ……


光が一気に広がり、 森の空気が震えた。


咲姫 「ひゃぁぁぁぁぁ……!!  な、なにが起きてるのですーー!!?」


風音 「……咲姫、風を乱すな。  “封じられた風”が出てくる」


咲姫 「出てこなくていいのですーー!!」


木の根元から、 ゆっくりと“風の粒子”が舞い上がった。


それは形を持たず、 ただ淡い光の風として揺れている。


冒険者A 「な、なんだ……あれ……」


冒険者B 「精霊……?  いや、違う……もっと古い……」


風花 「咲姫ちゃん、見て。  あれ……“風の魂”だよ」


咲姫 「魂なのですーー!?  そんなの聞いてないのですーー!!」


風音は静かに言った。


風音 「……“封じられた風”の本体。  名前は……まだ思い出してない」


咲姫 「名前……?」


風音 「……でも、咲姫の風を見てる。  “助けてくれるのか”って」


咲姫 「ひゃっ……!?  そんな目で見られても困るのですーー!!  私、ただの咲姫なのですーー!!」


小さな影は、 その風の魂にそっと触れた。


影 「……ぴ……」


風の魂 ……ふわ……


咲姫 「ひゃっ……!?  な、なんか……  “ありがとう”って聞こえたのです……!」


風音 「……うん。  “目覚めた”って言ってる」


オグマ 「封印が解けたということか」


紗綾 「……猫は“まだ半分”と言っています」


咲姫 「半分なのですーー!?  まだ続くのですーー!!?」


風音 「……咲姫。  “封じられた風”は、  まだ完全には戻ってない。  “欠片”が必要」


咲姫 「欠片って……  この子なのです……?」


影 「……ぴ……」


風花 「咲姫ちゃん。  この子と一緒に行けば、  “封じられた風”の本当の場所に行けるよ」


咲姫 「ひゃぁぁぁ……!  ま、また奥に行くのですーー!!?」


オグマ 「行くぞ。  ここからが本番だ」


森の奥から、 “古くて深い風”がふわりと吹いた。


まるで―― 咲姫たちを導くように。

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