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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.104 封じられた場所の入口なのです

小さな影の案内で、 咲姫たちは森のさらに奥へ進んでいった。


咲姫 「ひゃぁぁぁ……!  どんどん暗くなるのです……!」


風音 「……“眠ってる風”が濃くなってる」


風花 「咲姫ちゃんの風も、ちょっと緊張してるねぇ」


果林 「団子の袋も重く感じるよ~」


咲姫 「団子で判断しないでほしいのですーー!!」


森の深層は、 まるで時間が止まったように静かだった。


紗綾 「……猫は“ここが境界”と言っています」


咲姫 「境界って……  また怖いのです……!」


オグマ 「気を抜くな。  この先は完全に未知の領域だ」


冒険者A 「了解!」


冒険者B 「後衛、魔法準備!」


小さな影は、 ふと立ち止まり、 大きな木の根元を指さした。


影 「……ぴ……!」


咲姫 「ひゃっ……!?  こ、ここなのです……?」


風音 「……うん。  “封じられた風”が、この奥にいる」


咲姫 「奥って……  木の根元なのです……?」


風花 「この木……ただの木じゃないよ。  “風の祠”の古い型だねぇ」


咲姫 「ひゃぁぁぁ……!  また祠なのですーー!!」


紗綾 「……猫は“古代の祠”と言っています」


オグマ 「古代……?  記録にもほとんど残っていないはずだが……」


咲姫は木の根元に近づき、 そっと手を触れた。


……ふわっ。


咲姫 「ひゃっ……!?  な、なんか……風さんが……  震えてるのです……!」


風音 「……“封じられた風”が反応してる。  咲姫の風を感じてる」


咲姫 「感じなくていいのですーー!!  私、ただの咲姫なのですーー!!」


果林 「でも咲姫、風に好かれてるよ~」


咲姫 「好かれなくていいのですーー!!」


小さな影は、 咲姫の足元に寄り添い、 木の根元をそっと叩いた。


影 「……ぴ……ぴ……」


咲姫 「ひゃっ……!?  な、何を言ってるのです……!」


風音 「……“開けて”って言ってる」


咲姫 「開けるって……  どうやってなのですーー!!?」


風花 「咲姫ちゃんの風なら、  “鍵”になるよ」


咲姫 「また鍵なのですーー!!」


オグマ 「咲姫。  お前の風で触れてみろ。  祠が反応するはずだ」


咲姫 「うぅ……  怖いのです……  でも……がんばるのです……!」


咲姫が両手を木の根元に当てると――


……ふわぁぁぁ……


木の根元から、 淡い光がゆっくりと広がった。


咲姫 「ひゃっ……!?  ひ、光ってるのですーー!!」


風音 「……咲姫。  “封じられた風”が目を覚ます」


咲姫 「目を覚まさなくていいのですーー!!」


光はさらに強まり、 木の根元に“風の紋様”が浮かび上がった。


紗綾 「……猫は“封印が解ける”と言っています」


咲姫 「解けなくていいのですーー!!」


小さな影は、 その光の前に立ち、 まるで祈るように目を閉じた。


影 「……ぴ……」


咲姫 「ひゃっ……!?  こ、この子……  まさか……  封じられた風と……関係あるのです……?」


風音 「……うん。  この子は“封じられた風の欠片”」


咲姫 「欠片なのですーー!?  そんな大事な子だったのですーー!!?」


光がさらに強まり、 森の奥から――


……ふわり……


“古くて深い風”が吹いた。


まるで―― 長い眠りから目覚めたように。

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