ep.95 風の壁、なのです
フォレスト・マウラー ――巨大な影が、森の奥から姿を現した。
咲姫 「ひゃっ……! ま、マウラー……? マフラー……? マヨラー……? どれなのですーー!!?」
オグマ 「全部違う。落ち着け」
果林 「マヨラーなら仲良くできそう~」
咲姫 「できないのですーー!!」
風音 「……咲姫、かわいい」
巨大なマウラーは、 地面を揺らしながら突進の構えを見せた。
冒険者A 「来るぞ!!」
冒険者B 「避難民、あと五人! 間に合わない!!」
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! ど、どうするのです……!」
風音 「……咲姫。 “風は味方”」
咲姫 「味方って言われても怖いのですーー!!」
風花 「でもねぇ、咲姫ちゃん。 その風、みんなを守りたいって言ってるよ」
咲姫 「守りたい……?」
胸の奥が、 ふわっ、と温かくなった。
過去の森で感じた、 あの“優しい風”がよみがえる。
咲姫 「……風さん…… みんなを……守ってほしいのです……!」
ふわっ。
咲姫の足元から、 透明な風が立ち上がった。
風音 「……きた。 “風の壁”」
オグマ 「咲姫、集中しろ! マウラーが突っ込んでくる!」
マウラー 「グォォォォォ!!」
巨大な影が、 一直線に突進してくる。
咲姫 「ひぃぃぃ……! で、でも……守るのです……!!」
咲姫が両手を前に突き出した瞬間――
風の壁 ぱぁんっ!!
透明な風の膜が広がり、 マウラーの突進を真正面から受け止めた。
冒険者A 「な、なんだこの風……!」
冒険者B 「押し返してる……!? あの巨体を……!」
オグマ 「咲姫……やりやがったな……!」
咲姫 「ひゃぁぁぁ……! お、重いのですーー!! でも……がんばるのですーー!!」
風音 「……咲姫、風が喜んでる。 “守れてる”って」
風花 「避難、あと三人だよ! 咲姫ちゃん、もう少し!」
果林 「団子も応援してるよ~!」
咲姫 「団子は応援しないのですーー!!」
マウラー 「グォォォ……!」
風の壁に押し返され、 巨体がぐらりと揺れた。
冒険者A 「今だ! 前衛、突撃!!」
冒険者B 「後衛、魔法一斉射撃!!」
咲姫 「み、みんな……がんばるのです……!」
風の壁が、 咲姫の意志に応えるように輝いた。




