ep.90 町へ帰るのです
森を抜けると、 町の屋根が見えてきた。
咲姫 「はぁ……やっと帰ってきたのです……!」
果林 「団子~! 帰ったら団子食べる~!」
咲姫 「果林さんはいつも団子なのです……!」
紗綾 「……猫は“無事に帰れてよかった”と言っています」
風花 「ほんとだねぇ。 森の風も落ち着いたし、今日はゆっくり休もう」
風音 「……咲姫の風も、落ち着いてる。 でも……前より“強くて優しい”」
咲姫 「強くならなくていいのですーー!!」
オグマ 「強くなったというより、 “森に認められた”んだろう」
咲姫 「認められても困るのです……!」
リオの仲間の青年は、 まだ少しふらつきながらも笑っていた。
青年 「本当に……ありがとう。 君たちが来てくれなかったら、 ずっとあの場所に閉じ込められてた」
リオ 「もう無茶するなよ。 森の声が聞こえたからって突っ走るな」
青年 「……うん。 でも、不思議だよ。 “優しい風に呼ばれた”気がしたんだ」
咲姫 「ひゃっ……! そ、それは……精霊さんなのです……!」
風花 「ふふ。 でも咲姫ちゃんの風も混ざってたかもねぇ」
咲姫 「混ざらなくていいのですーー!!」
町の門が見えてくると、 咲姫は胸の奥をそっと押さえた。
咲姫 「……なんか……胸がぽかぽかするのです…… 森の風……まだ残ってるのです……」
風音 「……咲姫の風が、森とつながったから。 これからも、きっと“呼ばれる”」
咲姫 「呼ばれなくていいのですーー!!」
果林 「でも、咲姫なら大丈夫だよ~。 風にモテモテだし~」
咲姫 「モテなくていいのですーー!!」
オグマ 「まあ、呼ばれたら呼ばれたで、 またみんなで行けばいい」
風花 「そうだねぇ。 咲姫ちゃんひとりじゃないよ」
咲姫 「……みんな……ありがとうなのです……」
風音 「……咲姫の風、 これからもっと優しくなる」
咲姫 「優しくなるのは……ちょっとだけならいいのです……」
町の風が、 まるで咲姫の背中をそっと押すように吹いた。
咲姫 「……よし。 明日もがんばるのです……!」




