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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
1章

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ep.15 風のはじまり

はじめまして。 異世界転生ものを書いてみたくて、思い切って投稿してみました。 魔法が使えるようになる話ですが、いきなり強くなったりはしません。 ちょっとずつ、言葉を覚えて、魔法を学んでいく感じのゆるい成長物語です。 初心者ですが、楽しんでもらえたらうれしいです!

札所の前が、少しざわついていた。 昼下がりの石畳に、団子の香りと、きな臭い空気が混じっている。


「……なんか、騒がしいな」


ミナが足を止めた。 掲示板の前で、三人の少女が何か言い合っている。


「ちょっと、やめてほしいのです!」


栗色の髪に猫耳みたいな飾りの少女が、両手を広げて立ちはだかっていた。 声は高いけど、芯がある。


「私たち、ちゃんと順番を守って並んでたのです!」


隣の少女が、静かに頭を下げる。 「ごめんなさい。もしご迷惑をおかけしていたなら、私たちが下がります」


三人目の少女は、腕を組んでため息をついた。 「……こういう場面、苦手なんですよね。団子屋に行っていればよかったです」


相手は、札所の常連らしき修徒士たち。 中徒の男たちが、偉そうに腕を組んでいた。


「おいおい、ガキが札を取るなって言ってんだよ」 「魔士だかなんだか知らねぇけど、ここは修徒の札所だぞ?」


「……ミナ」


俺が言うより早く、ミナが一歩前に出た。 俺も、その横に並ぶ。


「その札、誰が取ってもいいんだよな?」


男たちがこちらを振り返る。 空気が、少しだけ止まった。


「……あんた、誰だよ」


「名もなき修徒。札を返してないやつ」


掲示板の前に立つ。 少女たちの前に、自然と体が動いていた。


「札の順番は、札所が決める。文句があるなら、札所に言えばいい」


ミナの声は静かだった。 それだけで、空気が変わった。


男たちは顔を見合わせて、舌打ちして去っていった。


「……ふん、つまんねぇの」 「行こーぜ、団子でも食って帰ろう」


空気が緩んだ。 栗色の少女が、ぴょんと跳ねた。


「助けてくれて、ありがとうございますなのです!」


ミナが尋ねる。


「……あんたたち、魔士?」


三人はそれぞれ頷いた。


「はいっ、私は咲姫サキなのです!猫魔士見習い、15歳です!」 「紗綾サヤと申します。神導師見習いです。ご挨拶が遅れて、申し訳ありません」 「果林カリンと申します。兎魔士です。見習いではありませんが……お酒が好きでして」


「旅の途中?」


「はいっ!修徒士になるために、札を集めてるのです!」


「でも、町によっては、魔士は歓迎されないこともあって……」紗綾が少しだけ声を落とす。


「ま、気にしないけどね」 果林が肩をすくめた。


「札、取れたのか?」


俺が聞くと、咲姫が小さく首を振った。


「さっきの人たちに押されて、まだ見れてないのです……」


「じゃあ、一緒に見ようか」


咲姫の顔がぱっと明るくなる。


「いいのですかっ!?」


「……札は、誰が見てもいいからな」


掲示板の前に並び直す。 札は三枚、新しく貼られていた。


西の丘の祠にて、風の鈴が鳴らぬ


市場裏の倉庫にて、猫の気配あり


町外れの水辺にて、影が映らぬ


「……どれも、猫神様絡みっぽいな」


ミナがつぶやく。


「どれが気になる?」


俺が聞くと、咲姫が迷わず指をさした。


「これなのです!“影が映らぬ”って、なんだか不思議で、わくわくするのです!」


「……またそういうのを選ぶんですね」果林が、少しだけ微笑む。


「でも、私も気になります」 紗綾が頷いた。


「じゃあ、決まりだな」


札を一枚、そっと剥がす。


「一緒に行く?」


三人は顔を見合わせて、同時に頷いた。


「はいっ!よろしくお願いしますなのです!」 「こちらこそ、よろしくお願いします」 「……ええ、同行させていただきます」


風が、少しだけ吹いた。 札が揺れて、猫の影が屋根を走った。


物語が、ようやく動き出す。 “誰かと歩く”旅が、ここから始まる。

最後まで読んでくださって、ありがとうなのです〜 感想やアドバイス、そっといただけたら嬉しいのです。 ★やリアクションで応援してもらえると、咲姫のしっぽがぽわぽわ揺れるのです〜 のんびり更新ですが、これからもよろしくお願いしますのですっ!

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