ep.82 新しい風の子、なのです
咲姫は、目の前の“風を止めた存在”にそっと手を伸ばした。 淡い光のようなその姿は、影よりもしっかりしていて、 でもどこか弱々しかった。
??? 「……あなたの風……すこし……」
咲姫 「うぅ……また私なのです…… でも、困ってるなら……少しだけなのです……!」
咲姫がそっと手を触れた瞬間、 胸の奥がふわっと温かくなった。
風音 「……咲姫の風が流れてる。 この子、風を取り戻してる」
果林 「わぁ~、光が強くなってるよ~」
紗綾 「……猫も“元気になってきた”と言っています」
風花 「咲姫ちゃんの風、やっぱり優しいねぇ」
咲姫 「優しくても困るのですーー!!」
??? 「……あたたかい…… あなたの風……すき……」
咲姫 「好きって言われても困るのですーー!!」
オグマ 「敵意は完全にないな。 むしろ、助けを求めていたようだ」
光の存在は、咲姫の手から離れると、 ふわっと形を変えた。
淡い光が集まり、 小さな“風の子”の姿になっていく。
風の子 「……ありがとう…… あなたの風……おいしかった……」
咲姫 「おいしいって言わないでほしいのですーー!!」
果林 「咲姫の風、おいしいんだって~」
咲姫 「果林さんまで言わないでほしいのですーー!!」
風音 「……この子、祠の影とは違う。 “森の風”そのもの」
風花 「森が弱ってたから、生まれたんだねぇ。 咲姫ちゃんの風で、ちゃんと形になったよ」
紗綾 「……猫は“この子は案内役だ”と言っています」
リオ 「案内役……? じゃあ、仲間のところへ……?」
風の子 「……つれていく…… あなたたち……やさしい風……」
咲姫 「つ、連れていくって……どこになのです……?」
風音 「……仲間の風が途切れた場所。 この子なら、道を知ってる」
オグマ 「よし。 風の子の案内に従うぞ」
風の子 「……こっち……」
咲姫 「うぅ……また風に呼ばれてるのです……!」
果林 「咲姫、モテモテだよ~」
咲姫 「モテなくていいのですーー!!」
新しく生まれた風の子が先導し、 咲姫たちは森のさらに奥へと進んでいった。




