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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.80 北の森、風が止まるのです

北の森の奥へ進むと、 さっきまで流れていた風が、急にぴたりと止まった。


咲姫 「えっ……風が止まったのです……?」


風音 「……ここ。  “誰かが風を止めた場所”」


咲姫 「止めるって何なのですーー!!」


果林 「団子の袋の音だけ響くよ~……こわ~い……」


紗綾 「……猫も耳を立てています。  “何かいる”と言っています」


風花 「空気が重いねぇ。  でも、祠のときみたいな怖さじゃないよ」


リオは周囲を見渡しながら、 少しだけ眉をひそめた。


リオ 「仲間の風がここで途切れてる……  でも、気配は消えてない。  “誰かに会った”風だ」


咲姫 「会ったって……誰に会ったのです?」


風音 「……風じゃない“何か”。  でも、敵意はなかった」


咲姫 「敵意がないなら……大丈夫なのです?」


風音 「……うん。  ただ、“風を止める力”を持ってる」


咲姫 「そんな力、あるのです……?」


風花 「風を止めるって、  “風と仲良しじゃないとできない”んだよ」


咲姫 「仲良しって何なのですーー!!」


果林 「咲姫も風と仲良しだよ~。  影さんにもモテモテだったし~」


咲姫 「モテても困るのですーー!!」


オグマ 「静かにしろ。  この先に何かいる」


森の奥から、 ひんやりとした“風のない空気”が流れてきた。


咲姫 「ひゃっ……なんか冷たいのです……」


風音 「……違う。  これは“風が引いてる”空気」


咲姫 「引くって何なのです……?」


風音 「……“誰かを待ってる”風」


咲姫 「待ってるって……誰をなのです……?」


風音 「……咲姫」


咲姫 「私なのですーー!!?」


果林 「咲姫、またモテてるよ~」


咲姫 「モテなくていいのですーー!!」


紗綾 「……猫は“行け”と言っています」


風花 「大丈夫だよ。  この風、優しいよ」


オグマ 「進むぞ。  風が咲姫を呼んでいる」


咲姫 「呼ばれても困るのですーー!!」


それでも、 咲姫は胸の奥が“ふわっ”と温かくなる方向へ、 一歩踏み出した。

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