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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.75 影、風に還るのです

影が光に包まれていくと、 祠の中の空気がふわっと温かくなった。 まるで長い眠りから目覚めたように、風が静かに流れ始める。


咲姫 「影さん……いなくなっちゃうのです……?」


風音 「……いなくなるんじゃない。  “風に戻る”だけ」


果林 「影さん、風の子だったんだもんね~」


紗綾 「……猫も“また会える”と言っています」


風花 「風になったら、どこにでも行けるからねぇ。  咲姫ちゃんのところにも、また来るよ」


咲姫 「また来るのです……? 本当に……?」


影 ふよ……(最後に咲姫の手に触れるように揺れる)


咲姫 「ひゃっ……! あったかいのです……」


光がふっと広がり、 影は静かに祠の風へと溶けていった。


風音 「……祠の風、完全に整った」


オグマ 「これで森の異変も収まるだろう」


果林 「影さん、元気でね~。団子の匂い、また嗅ぎに来てね~」


咲姫 「団子の匂いで来られても困るのです……!」


風花 「さあ、帰ろうか。  風が“帰っていいよ”って言ってるよ」


紗綾 「……猫も帰り道を覚えているようです」


祠を出ると、森の風はすっかり優しくなっていた。 冷たかった空気も、今はどこか柔らかい。


咲姫 「なんか……森が笑ってるみたいなのです」


風音 「……祠の風が戻ったから。  森も安心してる」


果林 「帰ったら団子食べよ~。いっぱい食べよ~」


咲姫 「果林さんはいつも団子なのです……!」


オグマ 「町まで気を抜くなよ」


風花 「でも、風は味方だよ。  影さんも、きっと一緒に帰ってる」


咲姫 「えっ……影さん、ついてきてるのです……?」


風音 「……うん。  “ありがとう”って風が言ってる」


咲姫 「風でありがとうって言われてもわからないのですーー!!」


みんなの笑い声が森に響き、 優しい風がそっと背中を押した。

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