ep.73 祠の風、戻ってきたのです
咲姫が風の源に触れたまま、 祠の中にふわっと柔らかい風が広がっていった。
咲姫 「わぁ……なんか、気持ちいい風なのです……」
風音 「……祠の風が戻ってきた。 ずっと眠っていた風が、動き始めた」
果林 「影さんも元気になってるよ~。ほら、ふよふよしてる~」
影 ふよふよ(いつもより明るい揺れ)
紗綾 「……猫も“風が戻った”と言っています」
風花 「祠の空気が軽くなったねぇ。 咲姫ちゃんの風、よく働いたよ」
咲姫 「働いたって何なのです……! 私、ただ触っただけなのです……!」
オグマ 「触っただけで祠が動くのは十分すごいことだ」
咲姫 「すごいって言われても困るのです……!」
影は咲姫の前に来て、 まるでお辞儀をするようにふよっと沈んだ。
咲姫 「えっ……影さん、またありがとうって言ってるのです……?」
風音 「……うん。“お礼の風”」
咲姫 「風でお礼されてもわからないのですーー!」
果林 「でも、かわいいよ~。影さん、ぽかぽかだし~」
影 ふよっ(照れているように揺れる)
風花 「影さん、少し形が変わってきたねぇ。 前より“風の子”っぽいよ」
紗綾 「……祠の風が戻ったことで、本来の姿に近づいているのでしょう」
風音 「……あと少し。 祠の奥に、もうひとつ“風の道”がある」
咲姫 「また奥があるのです!? 祠、どれだけ広いのですーー!」
オグマ 「影が案内しているうちに進むぞ」
影 ふよふよ(先導する)
果林 「咲姫、団子食べてから行く~?」
咲姫 「団子は後なのですーー!!」
祠の風が完全に戻り、 影は少しだけ明るく、少しだけしっかりした形になっていた。
咲姫たちは影の後ろをついて、 祠のさらに奥へと進んでいった。




