ep.71 祠、目を覚ますのです
咲姫が石台に触れたまま、胸の奥がふわっと温かくなる。 その温かさに呼応するように、祠の空気がゆっくりと動き始めた。
石台 かすかに光を強める。
咲姫 「うぅ……なんか、胸がぽかぽかなのです……」
風音 「……咲姫の風が、祠に流れ込んでる」
咲姫 「流れ込むって何なのです……!」
影 ふよっ(嬉しそうに揺れる)
果林 「影さん、めっちゃ喜んでるよ~」
紗綾 「……猫も“よくやった”と言っています」
風花 「咲姫ちゃんの風、祠が欲しかったんだねぇ」
オグマ 「祠が反応している。問題はなさそうだ」
石台の光がふっと広がり、 部屋全体に柔らかい風が流れた。
咲姫 「わっ……風が動いたのです……!」
風音 「……祠が目を覚ました。 長い間、風が足りなかったみたい」
果林 「じゃあ、影さんは風を探してたんだね~」
影 ふよふよ(肯定するように揺れる)
咲姫 「えっ……影さん、風を探してたのです?」
風花 「咲姫ちゃんの風が特別だったんだよ。 だから案内してくれたんだねぇ」
紗綾 「……影は“風の欠片”だったのかもしれません」
風音 「……うん。祠の風が弱ったときに生まれた“風の子”」
咲姫 「風の子……?」
影 ふよっ(咲姫の手に触れるように揺れる)
咲姫 「ひゃっ……! つ、冷たくないのです……?」
風音 「……咲姫の風をもらって、影の風が温かくなった」
果林 「影さん、ぽかぽかだよ~」
オグマ 「これで祠は安定するのか?」
風音 「……まだ。 でも、祠の奥に“もうひとつ”風がある」
咲姫 「もうひとつ……?」
影 ふよっ(奥の通路を指すように揺れる)
風花 「影さん、まだ案内してくれるみたいだよ」
紗綾 「……猫も“行け”と言っています」
果林 「じゃあ、次は奥だね~」
咲姫 「うぅ……また私の風が必要なのです……?」
風音 「……咲姫の風、祠が好きみたい」
咲姫 「好きって何なのですーー!!」
影 ふよふよ(楽しそう)
咲姫たちは影の後ろをついて、 祠のさらに奥へと進むことになった。




