ep.70 祠の隠し部屋、開いたのです
壁がゆっくりと横にずれていき、 奥に小さな空間が現れた。 薄暗いけれど、影がふよふよと入っていくので、道は見える。
咲姫 「ほ、本当に隠し部屋だったのです……!」
果林 「すごい~。影さん、ここ知ってたんだね~」
紗綾 「……猫は“ここが本当の祠だ”と言っています」
風花 「影さん、ずっとここに来たかったんだろうねぇ」
風音 「……風が集まってる。 この部屋、風の“中心”」
咲姫 「中心って何なのです……? 私、そんな大事な場所を開けちゃったのです……?」
オグマ 「問題ない。影が案内している」
影は部屋の中央にある石台の前で止まり、 ふよふよと上下に揺れた。
咲姫 「ここ……何かあるのです?」
果林 「石台だよ~。なんか置く場所っぽいよ~」
紗綾 「……古い祠の儀式に使われていたのかもしれません」
風花 「風を集める“器”みたいだねぇ」
風音は石台に手を当て、 しばらく風の流れを読むように目を閉じた。
風音 「……ここ、風が足りない。 影は……“ここに風を戻したい”」
咲姫 「戻したい……?」
影 ふよっ(咲姫の方を見る)
咲姫 「えっ……ま、また私なのです……?」
風音 「咲姫の風、甘い。 影が欲しいのは“その風”」
咲姫 「甘いって言わないでほしいのですーー!」
果林 「咲姫、風のお菓子みたいなんだよ~」
咲姫 「お菓子じゃないのですーー!」
影は石台の上を指し示すように揺れた。 まるで「ここに風をちょうだい」と言っているようだった。
風花 「咲姫ちゃん、ちょっとだけ風を分けてあげようか」
咲姫 「わ、わけるってどうするのです……?」
風音 「……咲姫が石台に触れるだけでいい。 風が動く」
咲姫 「動くのです!? また動くのです!? 私、そんなに風に好かれてるのです……?」
オグマ 「やってみろ。影が喜んでいる」
影 ふよふよ(期待している)
咲姫 「うぅ……わかったのです……!」
咲姫が石台にそっと手を置くと、 胸の奥がふわっと温かくなった。
石台 かすかに光る。
影 ふよっ(嬉しそうに揺れる)
風音 「……咲姫の風が入った。 これで“祠が目を覚ます”」
咲姫 「目を覚ますって何なのですーー!!」




