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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.70 祠の隠し部屋、開いたのです

壁がゆっくりと横にずれていき、 奥に小さな空間が現れた。 薄暗いけれど、影がふよふよと入っていくので、道は見える。


咲姫 「ほ、本当に隠し部屋だったのです……!」


果林 「すごい~。影さん、ここ知ってたんだね~」


紗綾 「……猫は“ここが本当の祠だ”と言っています」


風花 「影さん、ずっとここに来たかったんだろうねぇ」


風音 「……風が集まってる。  この部屋、風の“中心”」


咲姫 「中心って何なのです……?  私、そんな大事な場所を開けちゃったのです……?」


オグマ 「問題ない。影が案内している」


影は部屋の中央にある石台の前で止まり、 ふよふよと上下に揺れた。


咲姫 「ここ……何かあるのです?」


果林 「石台だよ~。なんか置く場所っぽいよ~」


紗綾 「……古い祠の儀式に使われていたのかもしれません」


風花 「風を集める“器”みたいだねぇ」


風音は石台に手を当て、 しばらく風の流れを読むように目を閉じた。


風音 「……ここ、風が足りない。  影は……“ここに風を戻したい”」


咲姫 「戻したい……?」


影 ふよっ(咲姫の方を見る)


咲姫 「えっ……ま、また私なのです……?」


風音 「咲姫の風、甘い。  影が欲しいのは“その風”」


咲姫 「甘いって言わないでほしいのですーー!」


果林 「咲姫、風のお菓子みたいなんだよ~」


咲姫 「お菓子じゃないのですーー!」


影は石台の上を指し示すように揺れた。 まるで「ここに風をちょうだい」と言っているようだった。


風花 「咲姫ちゃん、ちょっとだけ風を分けてあげようか」


咲姫 「わ、わけるってどうするのです……?」


風音 「……咲姫が石台に触れるだけでいい。  風が動く」


咲姫 「動くのです!? また動くのです!?  私、そんなに風に好かれてるのです……?」


オグマ 「やってみろ。影が喜んでいる」


影 ふよふよ(期待している)


咲姫 「うぅ……わかったのです……!」


咲姫が石台にそっと手を置くと、 胸の奥がふわっと温かくなった。


石台 かすかに光る。


影 ふよっ(嬉しそうに揺れる)


風音 「……咲姫の風が入った。  これで“祠が目を覚ます”」


咲姫 「目を覚ますって何なのですーー!!」

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