ep.68 影、案内を始めるのです
影はしばらく咲姫の周りをくるくる回っていたが、 突然ふよっと向きを変え、祠の奥へ向かって進み始めた。
咲姫 「えっ……帰るのです? 影さん……?」
影 ふよふよと前へ進む。
果林 「これ、案内してるよね~。絶対そうだよ~」
紗綾 「……猫も“ついていけ”と言っています」
風花 「影さん、悪い子じゃないねぇ。道案内してくれてるのかも」
風音 「……咲姫の風に反応してる。 “こっちだよ”って風」
咲姫 「案内されてるのです!? 私たちが!? 影さんに!?」
オグマ 「……行くしかないな。危険は感じない」
咲姫 「危険はないけど、意味はわからないのです!」
影は祠の前でぴたっと止まり、 扉の隙間をふよっと指し示すように揺れた。
果林 「ほら~。完全に“こっち来て~”ってやつだよ~」
紗綾 「……猫も“行け”と言っています」
風花 「咲姫ちゃん、風が味方してるよ」
風音 「……祠の奥、風が弱い。 でも、咲姫の風なら通れる」
咲姫 「通れるって何なのです……!? 私、そんな特別な風じゃないのです!」
風音 「……甘い風。影が好きな風」
咲姫 「甘いって言わないでほしいのですーー!」
影は咲姫の前に戻り、 ふよふよと上下に揺れた。 まるで「大丈夫だよ」と言っているようだった。
オグマ 「行くぞ。影が案内してるうちに進む」
咲姫 「うぅ……わかったのです……!」
果林 「団子は……影に食べられないようにする~」
紗綾 「……猫は祠の中が気になるようです」
風花 「じゃあ、行こうか。風が呼んでるよ」
影 ふよっ(先導する)
咲姫たちは影の後ろをついて、 祠の中へと足を踏み入れた。




