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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.67 影、遊びたいだけなのです

祠の前で、黒い影がふよふよと揺れていた。 咲姫の前に来ると、まるで遊び相手を見つけた子どものように動く。


咲姫 「な、なんで私の前で止まるのです……? 遊びたいのです?」


影 ふよふよと揺れる。


咲姫 「肯定なのです……!」


果林 「咲姫、影にモテモテだね~」


紗綾 「猫が“遊び相手にされている”と怒っています」


風花 「悪い子じゃなさそうだねぇ。ただの風の子みたい」


風音 「咲姫の風に反応してる。“遊びたい風”」


咲姫 「遊びたい風って何なのです!」


影は咲姫が一歩下がると、同じようにふよっと下がった。 まるで真似をしているようだった。


咲姫 「真似してるのです……?」


影 ふよっ。


果林 「かわいい~。影の咲姫だ~」


紗綾 「猫は真似されて怒っています」


風花 「影さん、咲姫ちゃんの風が好きなんだねぇ」


風音 「咲姫の風、甘い匂いする」


咲姫 「甘いって何なのです! 私は団子じゃないのです!」


影は咲姫の周りをくるくる回り続けた。 そのたびに、咲姫の胸の奥がふわっと温かくなる。


咲姫 「……なんか、影の動きがわかるのです……?」


風音 「咲姫、風を読むようになってる」


咲姫 「読むって何なのです!」


影は咲姫の前でぴたっと止まり、 胸の前で円を描くように揺れた。


風音 「風の形を教えてる」


咲姫 「影が教えてるのです!? 私に!? なんでなのです!」


風花 「かわいいねぇ。影さん、先生みたい」


果林 「影先生~」


紗綾 「猫は弟子入りしないと言っています」


オグマ 「……遊んでるだけだな」


咲姫 「遊ばれてるのです!」


影はまた咲姫の周りをくるくる回り、 まるで「もっと遊ぼう」と言っているようだった。

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