ep.67 影、遊びたいだけなのです
祠の前で、黒い影がふよふよと揺れていた。 咲姫の前に来ると、まるで遊び相手を見つけた子どものように動く。
咲姫 「な、なんで私の前で止まるのです……? 遊びたいのです?」
影 ふよふよと揺れる。
咲姫 「肯定なのです……!」
果林 「咲姫、影にモテモテだね~」
紗綾 「猫が“遊び相手にされている”と怒っています」
風花 「悪い子じゃなさそうだねぇ。ただの風の子みたい」
風音 「咲姫の風に反応してる。“遊びたい風”」
咲姫 「遊びたい風って何なのです!」
影は咲姫が一歩下がると、同じようにふよっと下がった。 まるで真似をしているようだった。
咲姫 「真似してるのです……?」
影 ふよっ。
果林 「かわいい~。影の咲姫だ~」
紗綾 「猫は真似されて怒っています」
風花 「影さん、咲姫ちゃんの風が好きなんだねぇ」
風音 「咲姫の風、甘い匂いする」
咲姫 「甘いって何なのです! 私は団子じゃないのです!」
影は咲姫の周りをくるくる回り続けた。 そのたびに、咲姫の胸の奥がふわっと温かくなる。
咲姫 「……なんか、影の動きがわかるのです……?」
風音 「咲姫、風を読むようになってる」
咲姫 「読むって何なのです!」
影は咲姫の前でぴたっと止まり、 胸の前で円を描くように揺れた。
風音 「風の形を教えてる」
咲姫 「影が教えてるのです!? 私に!? なんでなのです!」
風花 「かわいいねぇ。影さん、先生みたい」
果林 「影先生~」
紗綾 「猫は弟子入りしないと言っています」
オグマ 「……遊んでるだけだな」
咲姫 「遊ばれてるのです!」
影はまた咲姫の周りをくるくる回り、 まるで「もっと遊ぼう」と言っているようだった。




