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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.65 影の風、初めての対峙

祠の扉が開き、 黒い“風のような影”がゆらりと姿を現した。


咲姫は思わず後ずさる。 「な、なに……なのです……あれ……!」


影は形を持たず、 煙のように揺れ、 風のように流れ、 しかし“風ではない”。


果林は団子袋を抱えたまま震える。 「ひ、ひぃぃ……団子落としそう……!」


紗綾は猫を抱きしめ、 「……猫が怯えています。これは……ただの魔物ではありません」 と、静かに言った。


風花は咲姫の肩に手を置き、 「大丈夫。深呼吸してね。風は味方だよ」 と、優しく支える。


風音は影を見つめ、 風の流れを読むように目を細めた。


「……“風の形をした何か”。  風じゃない。  でも……風を“食べてる”」


咲姫は息を呑む。 「た、食べてる……?」


風音は頷いた。 「……森の風が弱ってるのは、こいつのせい」


オグマの一歩

影がゆらりと揺れ、 咲姫たちの方へ“にじり寄る”。


オグマはすぐに前へ出た。 「下がれ。  こいつは……普通じゃない」


影は音もなく、 ただ“風のように”近づいてくる。


咲姫は震える声で言う。 「オグマさん……気をつけてほしいのです……!」


オグマは短く答えた。 「……任せろ」


影の“風”が触れる

影がふっと揺れ、 咲姫の頬をかすめた。


その瞬間―― ひゅっ…… と、咲姫の体温が一瞬だけ奪われる。


「ひゃっ……! つ、冷たいのです……!」


風花がすぐに抱き寄せる。 「大丈夫、大丈夫。深呼吸して」


風音は影を見つめ、 「……触れたら“風”を奪われる。  生命の風……息の風……全部」


紗綾は静かに言った。 「……だから森の風が弱っていたのですね」


果林は団子袋を抱えたまま、 「ひ、ひぃ……団子も凍りそう……!」 と、震える。


リオの震え

リオは影を見た瞬間、 膝が震え、地面に手をついた。


「……こ、これだ……!  僕たちを襲った“気配”……!」


咲姫は慌てて駆け寄る。 「リオさん……!」


リオは震える声で言った。 「……仲間が……あれに……!」


風花は優しく肩に手を置く。 「大丈夫。今は私たちがいるよ」


影が“動く”

影が突然、 ぶわっ と形を変えた。


風音が叫ぶ。 「……来る!」


オグマは剣を構え、 「下がれ!」


咲姫たちは一斉に後退する。


影は風のように、 しかし風ではない速度で、 オグマへ向かって突き進んだ。


オグマの初撃

オグマは影の動きを読み、 剣を横に払う。


ザッ!


影は切れたように見えたが―― すぐに形を戻した。


咲姫は息を呑む。 「き、効いてないのです……!」


風音は低く言った。 「……“形がない”。  斬っても意味がない」


紗綾は静かに言った。 「……では、どうすれば……?」


風花は咲姫の手を握り、 「大丈夫。風は味方だよ」 と、優しく言う。


果林は団子袋を盾にしながら、 「ひぃぃ……どうするの~……!」 と、情けない声を出す。


影は再び形を変え、 今度は咲姫たちの方へ向かってきた。


咲姫は震えながらも、 一歩だけ前に出た。


「……こ、こわいのです……  でも……守りたいのです……!」


風音が咲姫の横に立ち、 「……風が言ってる。  “まだ戦うな”。  “見ろ”。  “感じろ”」


咲姫は息を呑む。


影が、 咲姫の目の前で止まった。

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