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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.63 森の入り口、ゆれる風

町を出てしばらく歩くと、 森の入口が見えてきた。


咲姫は足を止め、 胸に手を当てて小さく息を吸った。


「……なんか、空気が違うのです」


果林は団子を抱えたまま、 「うん……なんか冷たい風~……」 と、肩をすくめる。


紗綾は猫を抱きしめ、 「……鳥の声がしませんね」 と、静かに呟いた。


風花は森の風を感じながら、 「ここから先は“森の風”だねぇ。  町の風とは違うよ」 と、優しく言った。


風音は目を細め、 風の流れを深く読むように息を吸う。


「……森の奥で“風がぶつかってる”。  呼ぶ風と、拒む風」


咲姫はびくっと肩を震わせる。 「こ、こわいのです……」


風花がそっと咲姫の手を握る。 「大丈夫。風は味方だよ。  怖いときは、深呼吸してね」


咲姫はこくんと頷いた。


リオの緊張

リオは地図の切れ端を握りしめ、 森の奥を見つめていた。


「……この先だ。  祠は、もっと奥にある」


声は震えていたが、 その目には強い決意が宿っていた。


オグマは短く言った。 「無理はするな。  倒れたら、また背負って戻ることになる」


リオは苦笑した。 「……それは、避けたいな」


森の中へ

森に一歩踏み入れた瞬間、 空気が変わった。


ひゅう…… と、細い風が足元を撫でる。


咲姫は思わず声を漏らした。 「ひゃっ……!」


果林は団子を抱えたまま、 「なんか……風が細い~……」 と、そわそわする。


紗綾は周囲を見渡し、 「……木々が、風を避けているように見えます」 と、静かに言った。


風花は木の葉に触れ、 「森が緊張してるねぇ。  風が“息を潜めてる”」 と、優しく呟く。


風音は風の流れを読み、 「……祠の方角から“逆風”が来てる。  行くな、って風」 と、淡々と告げた。


咲姫は不安そうに言う。 「で、でも……行くのです……?」


風音は頷いた。 「……行く風も混じってる。  “行けるけど、気をつけろ”って風」


オグマは前を向き、 「……なら、進むだけだ」 と、静かに言った。


祠の“気配”

森の奥へ進むにつれ、 風はさらに冷たく、細くなっていった。


リオが立ち止まり、 震える声で言った。


「……ここだ。  この先に……祠がある」


咲姫は胸に手を当て、 「なんか……胸がざわざわするのです……」


風音は風を読み、 「……祠の風が“呼んでる”。  でも……“拒んでる”」


風花は咲姫の背中をそっと押す。 「大丈夫。風は嘘をつかないよ」


オグマは剣の柄に手を置き、 「……気を引き締めろ。  ここから先は、何が出てもおかしくない」


果林は団子袋をぎゅっと握りしめ、 「ひ、ひぃ……でも、がんばる~……」 と、小さく言った。


紗綾は猫を抱きしめ、 「……行きましょう。  祠が、私たちを待っています」 と、静かに言った。


森の奥から、 ふっ…… と、風がひとつ、咲姫たちの頬を撫でた。

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