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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
第一幕~序章

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13/197

ep.13 (未定)

はじめまして。 異世界転生ものを書いてみたくて、思い切って投稿してみました。 魔法が使えるようになる話ですが、いきなり強くなったりはしません。 ちょっとずつ、言葉を覚えて、魔法を学んでいく感じのゆるい成長物語です。 初心者ですが、楽しんでもらえたらうれしいです!

灯りが揺れていた。 昼でも夜でもないような、曖昧な時間。 風は止まっていて、焙じ茶の香りも、もう薄い。


札を見ていた。 最初に受け取った、あの札。 「黒猫を探してほしい」って書かれてたやつ。


「……見つけた、のかな」


屋根の上にいたクロノ。 目が合った。 響きが届いた。 でも、それが“見つけた”ってことなのか、よくわからない。


「札って、返すんだよな」


誰に言うでもなく、ぽつりと。 棚には、返された札が並んでる。 でも、これはまだ、俺の手の中にある。


「それ、返さなくてもいい札かもね」


ミナが、いつの間にか隣にいた。 団子をかじりながら、空を見てる。


「猫を探す札って、姿を見つけることじゃなくて、気配を受け取ること。  あんた、クロノの“尾”を感じたんでしょ?」


「……感じた、と思う」


「なら、それでいい。札って、響きが残れば、それで終わることもあるから」


札の端に、黒い毛が一本、挟まってた。 風に乗ってきたのか、クロノが置いていったのか。


「……これ、クロノの?」


「たぶんね」


札を閉じた。 返すでもなく、しまうでもなく。 ただ、膝の上に置いた。


「……なんか、始まった気がするけど、まだ何も始まってない気もする」


「それが“始まり”ってやつだよ」 ミナが、空を見たまま言う。 「猫神様は、名前をつけない。  でも、風が通ったあとに、誰かが“名付ける”んだって」


「……じゃあ、今はまだ“未定”か」


「うん。でも、それでいい。  風が止まってるときって、響きが深くなるから」


屋根の上で、クロノが目を開けた。 風は吹いてない。 でも、空気が少しだけ揺れた。


胸の奥に手を当てる。 爪痕が、ほんのり温かい。


「……いつか、誰かと一緒に歩けるかな」


ミナは何も言わなかった。 団子の串を置いて、立ち上がる。


「行こ。風が動き出す前に、次の札、見に行こ」


札を持って立ち上がる。 まだ“未定”のまま。 でも、たしかに何かが、始まってた。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました! 感想やアドバイスなど、いただけたらとても励みになります。 これからも、のんびり続けていきますので、よろしくお願いします!

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