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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.59 倒れていた人と、風の知らせ

市場の外れは、 朝の光が差し込む静かな場所だった。


咲姫たちが駆けつけると、 地面にひとりの青年が倒れていた。


服は泥だらけ、 息は荒く、 手には破れた地図の切れ端。


咲姫は思わず声を上げた。 「だ、大丈夫なのです……!?」


青年はうっすらと目を開け、 かすれた声で呟いた。


「……た、助け……て……」


果林は団子を抱えたまま、 「ひ、ひぃ……! だ、大丈夫かな……?」 と、そわそわする。


紗綾は青年の呼吸を確かめ、 「……熱があります。疲労と脱水です」 と、静かに言った。


風花は青年の手をそっと握り、 「大丈夫だよ。もう安全だからね」 と、優しく声をかける。


風音は風の流れを読み、 「……この人、夜のうちに“森の方角”から来た」 と、淡々と告げた。


咲姫は目を丸くする。 「森……?」


風音は頷く。 「……風が言ってる。逃げてきた風」


オグマは青年を抱き上げ、 「宿に運ぶ。話はそれからだ」 と、落ち着いた声で言った。


宿に戻ると、 主人が驚きながらも部屋を用意してくれた。


青年は布団に寝かされ、 水を飲ませると少しだけ落ち着いた。


咲姫は心配そうに覗き込む。 「だ、大丈夫なのです……?」


青年はゆっくりと目を開け、 咲姫たちを見て、 かすれた声で言った。


「……ありがとう……助かった……」


果林は団子を差し出し、 「甘いの食べる~? 元気出るよ~」 と、にこにこする。


青年は弱々しく笑った。 「……ありがとう……」


紗綾は静かに尋ねる。 「どうして、あんな場所で倒れていたのですか?」


青年はしばらく黙っていたが、 やがて、震える声で言った。


「……森で……“何か”に襲われたんだ……」


咲姫は息を呑む。 「な、なにかって……?」


青年は首を振る。 「わからない……でも……風が……変だった……」


風音が目を細める。 「……風が乱れた?」


青年は弱く頷いた。 「……あれは……普通じゃない……」


風花は咲姫の肩に手を置き、 「大丈夫。今は休んでね」 と、優しく言った。


オグマは腕を組み、 「……森で何が起きてる?」 と、低く呟いた。


風音は風を読み、 「……森の奥で“強い風”が動いてる」 と、静かに告げた。


咲姫は胸に手を当てて、 「また……こわい風なのです……?」 と、小さく呟く。


風音は首を振る。 「……まだわからない。でも、風が呼んでる」


青年が倒れていた理由は、 この町に新しい風を運ぶ“始まり”だった。

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