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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.57 宿の灯と、小さな影

町の宿は、木の香りがする落ち着いた場所だった。 旅人が多いのか、受付の女性は慣れた笑顔で迎えてくれる。


「四人部屋と、二人部屋が空いてるよ。どうする?」


咲姫はきょとんとした顔で、 「ふ、二人部屋……?」 と、首をかしげる。


果林は団子を抱えたまま、 「じゃあ、咲姫と私で二人部屋~?」 と、にこにこ提案する。


紗綾は猫を抱きながら、 「私はどちらでも構いません」 と、静かに言った。


風花は微笑んで、 「じゃあ、女の子たちで四人部屋にしようか。オグマさんは別でね」 と、自然にまとめる。


オグマは短く頷いた。 「……助かる」


部屋に入ると、 木の床、柔らかい布団、 窓から入る夜風が心地よかった。


咲姫は布団にぽすんと倒れ込み、 「はぁぁ……疲れたのです……」 と、ぐったりする。


果林は団子袋を開けて、 「はい、夜の団子~。疲れたときは甘いのが一番~」 と、みんなに配る。


紗綾は猫を撫でながら、 「……今日はいろいろありましたね」 と、静かに言った。


風花は窓を開け、 夜風を感じながら微笑む。 「でも、いい風だったよ。みんなで助け合えたしね」


風音は風の流れを読み、 「……町の風は落ち着いてる。今日はもう乱れない」 と、淡々と告げた。


咲姫は団子をもぐもぐしながら、 「オグマさん、すごかったのです……」 と、ぽそっと呟く。


果林も頷く。 「ね~! あのモンスター、ひと撃ちだったよ~」


紗綾は少しだけ表情を曇らせる。 「……でも、あの人、どこか寂しそうでした」


風花は優しく微笑んで、 「強い人ほど、背負ってるものがあるんだよ」


風音は短く、 「……風が言ってた。あの人は“帰る場所”を探してる」 と、静かに言った。


咲姫は目を丸くする。 「帰る場所……?」


風音は頷く。 「……風は嘘をつかない」


果林は団子をかじりながら、 「じゃあ、オグマさんも旅人なんだね~」 と、のんびり言う。


風花は窓の外を見つめて、 「いつか、あの人にも“風の止まる場所”が見つかるといいね」 と、優しく呟いた。


咲姫は布団にくるまりながら、 「……私たちも、見つけるのです。帰る場所」 と、小さく言った。


風音は静かに頷く。 「……明日の風は、少し遠くへ行く風」


紗綾は猫を抱きしめ、 「では、今日はゆっくり休みましょう」 と、柔らかく言った。


果林は布団に潜り込み、 「おやすみ~……団子……」 と、寝言のように呟く。


咲姫はくすっと笑って、 「おやすみなのです……」 と、目を閉じた。


夜風がそっと吹き抜け、 宿の灯りが静かに揺れた。

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