甘味漫遊記6:風音の花灯最中日記
今日は花灯坂で「花灯最中」を食べました。丸い最中の皮に花の模様が描かれていて、中にはほんのり甘い餡が詰まっています。手に取ると、まるで夜の灯りに花が咲いたようで、見ているだけで心が華やぎました。口に入れると皮の香ばしさと餡のやさしい甘さが重なり、夜の静けさの中に小さな祝祭が生まれるようでした。
町の人たちはこの最中を「灯りの最中」と呼んでいて、食べると心が明るくなり、未来を迎える準備が整うんだそうです。お店のお姉さんも「これを食べると、夜でも花火を見た気分になるよ」と笑っていました。確かに、最中の甘さと花模様の美しさは、夜の広場に小さな灯りをともしているようでした。
花灯坂は夜になると静かで、昼間の賑わいがすっかり消え、石畳に月明かりが降り注ぎます。旗が風に揺れる音だけが響き、町全体が眠りにつこうとしていました。そんな中で食べる花灯最中は、夜の静けさに彩りを添えるようで、心がふわっと温かくなりました。
……でも、気づけば千夜が月見団子を片手にこちらを見ていて、「交換しよう」と言われてしまいました。私は花灯最中を半分渡して、代わりに月見団子を受け取ることに。花灯最中の華やかさと月見団子の静けさが重なって、夜の広場に不思議な調和が生まれました。日記には「花灯最中、半分は千夜の月見団子と交換」と書いておこうかな。少し不思議だけど、こうして分け合うのもまた祝祭の形なのかもしれません。




