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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.55 町のざわめきと、小さな違和感

町に足を踏み入れた瞬間、 咲姫は思わず立ち止まった。


「ひ、人がいっぱいなのです……!」


市場の通りには、 野菜を売る声、鍛冶場の金属音、 焼き菓子の甘い匂い、旅人の笑い声。


果林は団子を抱えたまま、 「すごい~! お祭りみたい~!」 と、目を輝かせる。


紗綾は猫を抱きしめ、 「……風が忙しいですね。いろんな声を運んでいます」 と、静かに呟いた。


風花は微笑んで、 「町の風は賑やかだねぇ。踊りたくなるよ」 と、軽やかに言う。


風音は風の流れを読み、 「……人の声、商人の声、旅人の声。あと……少しだけ“乱れ”」 と、淡々と告げた。


咲姫が首をかしげる。 「乱れ……?」


風音は短く答える。 「……まだ小さい。でも、気になる」


オグマは町の人々に軽く会釈しながら歩いていた。 どうやら、この町にも顔見知りがいるらしい。


「お、オグマじゃないか!」 「久しぶりだな!」


鍛冶屋の男が声をかけてくる。


オグマは少し照れたように、 「……ああ。しばらく留守にしてた」 と、短く返した。


咲姫はその様子を見て、 「オグマさん、どこでも人気なのです……」 と、ぽそっと呟く。


果林は団子をかじりながら、 「優しいし強いし、そりゃ人気だよ~」 と、のんびり言う。


紗綾は猫を撫でながら、 「……信頼されている人ですね」 と、静かに言った。


風花は微笑んで、 「守る風を持ってる人は、どこでも好かれるよ」 と、優しく言う。


そのとき。


市場の奥から、 ガシャーン! と、何かが倒れる音が響いた。


咲姫がびくっと肩を震わせる。 「な、なんなのです……!」


風音が風を読む。 「……小さな乱れ。誰かが走ってる」


果林は団子を抱えたまま、 「え、え、事件~?」 と、そわそわする。


紗綾は猫を抱きしめ、 「……子どもの足音です。急いでいます」 と、静かに言った。


風花は咲姫の肩に手を置き、 「大丈夫。まずは様子を見ようね」 と、優しく言う。


オグマはすでに動き出していた。 「……行くぞ」


咲姫は胸に手を当てて、 「は、はいなのです……!」 と、小さく頷いた。


市場のざわめきの中で、 小さな“風の乱れ”が確かに生まれていた。


それが何を意味するのか、 咲姫たちはまだ知らない。

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