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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.53 風の向く方へ

朝の光が集落を照らし、 昨日の騒ぎが嘘のように穏やかな空気が流れていた。


咲姫たちは荷物をまとめ、 集落の人々に挨拶をしていた。


女性が咲姫の手を握る。 「昨日は本当にありがとうね。怖かったでしょう?」


咲姫は少し照れながら、 「こ、こわかったのです……でも、守ってもらったのです」 と、小さく笑った。


果林は団子の袋を抱え、 「団子までいただいちゃって……ありがとうございます~」 と、ぺこぺこ頭を下げる。


子どもたちがオグマに駆け寄る。 「オグマ兄ちゃん、また来てね!」 「次は遊んでよ!」


オグマは少し照れたように頭をかいた。 「……ああ。元気でいろよ」


紗綾は猫を抱きながら、 「……優しい人たちですね」 と、静かに呟いた。


風花は微笑んで、 「民の風は柔らかいねぇ。こういう場所、大事にしたいね」 と、優しく言った。


風音は風の流れを読み、 「……今日の風は“移動の風”。ここに留まる風じゃない」 と、淡々と告げる。


咲姫は胸に手を当てて、 「じゃあ……行くのです」 と、小さく頷いた。


街道に出ると、 昨日とは違う風が吹いていた。


少し強くて、 少し遠くへ誘うような風。


果林が団子をかじりながら、 「ねぇねぇ、次の町ってどんなところかな~?」 と、わくわくした声を出す。


紗綾は空を見上げ、 「……きっと、また新しい風が吹いています」 と、静かに言った。


風花は咲姫の背中を軽く押す。 「大丈夫。風は味方だよ。怖くなったら、深呼吸してね」


咲姫はこくんと頷き、 「うん……がんばるのです」 と、前を向いた。


オグマは無言で歩きながら、 時折、後ろの三人を気にするように振り返る。


風音はその様子を見て、 「……守る風だね」 と、ぽつりと呟いた。


街道の先には、 まだ見ぬ町と、まだ知らない風が待っている。


咲姫たちの旅は、 ようやく一歩を踏み出したばかりだった。

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