表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/197

PV1500記念「うささま式☆めいどきっさ うさちぁん亭」(なろう)

「いらっしゃいましぇ~~~ごしゅじんしゃまぁ~~~~~~」


開店と同時に、うささまが全力で叫んだ。 お盆は逆さま、エプロンは後ろ前、耳にはなぜかリボンが三つ。


「うささま、まずエプロン直して!あとお盆、落ちる落ちる!」


「だいじょぶぅ~~~!うさちぁん、てんしだから~~~!」


「天使はお盆落とさないの!!」


果林が慌てて駆け寄るも、うささまはすでにくるくる回転中。 その横で、咲姫が元気よくお出迎え。


「ごしゅじんさまっ!おかえりなさいっぴょんっ!」


「語尾が迷子だよ咲姫……!」


「えっ、ぴょんじゃないの!?メイドってぴょんって言うんじゃないの!?」


「誰の影響受けたのよ……」


一方、紗綾はというと――


「……はい、注文は“しゅわしゅわミルク”と“うさちぁん特製おやつ盛り”ですね。かしこまりました」


「紗綾だけ普通に有能……!


「うさちぁん、てんしだから~~~!」


そう叫んだうささまは、くるりと回って――


「おっとっとっと……あれ?おぼんが……」


ガッシャーン!


「うささまァァァァァ!!」


果林の悲鳴が店内に響く。 床には、見事にひっくり返った“しゅわしゅわミルク”と、うささまの足あとがくっきり。


「うさちぁんの……しゅわしゅわが……」


「それ、私が朝から泡立てたやつなんだけど!? もう……!」


「だいじょぶだいじょぶ、うさちぁん、もういっかいふぃ~ってやるから!」


「“ふぃ~”じゃないの!泡立て器使って!」


その横で、咲姫が元気よくお客さんにお辞儀していた。


「ごしゅじんさまっ!おかえりなさいましっぴょんっ!……あれ?“ましぴょん”って変?」


「変だよ!語尾が“ましぴょん”って何!?」


「でも、かわいくない?かわいいよね?ねっ?」


「……まあ、かわいいけど……」


「やったぁ~!じゃあ、咲姫は“ましぴょん”でいくねっ!」


「やめてとは言ってないけど、やめてほしい気持ちはある……」


カウンターの奥では、紗綾が黙々とコーヒーを淹れていた。 姿勢は完璧、動きは静かで美しい。 ただし、表情はいつも通りの無表情。


「……“萌え”って、こういうので合ってるのかしら」


「うん、なんか違うけど、逆にアリかも……」


「うさちぁん、つぎは……おきゃくしゃんに、あいじょーこめて、オムライスにおえかきするぅ~!」


「えっ、うささま、それは私が――」


「かりんちぁんは、みてて!うさちぁん、いま、しゅごいのかくから!」


うささまは、ケチャップを手に取ると、オムライスの上に勢いよく――


「うさちぁん、みててね……うさちぁんの、かお~~~~」


ぐにゃぐにゃぐにゃっ。


「……うささま、それ、顔?」


「うん!うさちぁんの、えがお~~」


「……なんで眉毛が三本あるの?」


「うさちぁん、よろこびすぎて、まゆげふえたの~」


「そんな進化ある!?」


そのとき、店の扉が開いて、新しいお客さんが入ってきた。


「いらっしゃいましぇ~~~~~~ うさちぁんていへ、ようこそぉ~~~~~~」


「……え、ここ喫茶店ですよね?」


「はいっ!うさちぁんが、しゅじんこうの、めいどきっさですっ!」


「主役って言っちゃった!?」


「おきゃくしゃん、なにたべるぅ~?うさちぁんのてづくり、たべるぅ~?」


「えっと……じゃあ、コーヒーと――」


「はいっ!しゅわしゅわミルクですねっ!」


「いや、言ってない……!」


「うさちぁん、いま、こころでよんだの~」


「読心術!? メイド喫茶ってそんなハイテクだったの!?」


お客さんが戸惑う中、咲姫が勢いよく登場。


「ごしゅじんさまっ!こちら、うさちぁん特製“しゅわしゅわミルク”でございますっぴょんっ!」


「えっ、また“ぴょん”!? ていうか、さっき落ちたやつじゃ……」


「だいじょぶですっ!これは“二代目”ですっぴょんっ!」


「二代目って何!?」


「うささま、ちょっと落ち着いて!お客さん困ってるから!」


果林が慌てて駆け寄るも、うささまはすでに“しゅわしゅわミルク”を両手に持って、くるくる回転中。


「しゅわしゅわ~♪ しゅわしゅわ~♪ うさちぁんの、まほうのしゅわしゅわ~♪」


「それ、こぼれるってばぁぁぁぁ!」


店の片隅、カウンターの奥。 紗綾は静かに、コーヒーを淹れていた。


「……ふぅ」


目の前では、うささまがテーブルクロスにくるまって転がり、 咲姫は“ぴょん”の語尾を試行錯誤しながらメニューを読み上げ、 果林はお冷やをこぼして床を拭いている。


「……これ、営業って言えるのかしら」


ぽつりと、誰にも聞こえない声。 でも、その口元には、かすかな笑み。


「まあ……悪くないけど」


カップに注がれたコーヒーから、ふわりと湯気が立ちのぼる。 その香りは、どこか甘くて、やさしかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ