PV1500記念「うささま式☆めいどきっさ うさちぁん亭」(なろう)
「いらっしゃいましぇ~~~ごしゅじんしゃまぁ~~~~~~」
開店と同時に、うささまが全力で叫んだ。 お盆は逆さま、エプロンは後ろ前、耳にはなぜかリボンが三つ。
「うささま、まずエプロン直して!あとお盆、落ちる落ちる!」
「だいじょぶぅ~~~!うさちぁん、てんしだから~~~!」
「天使はお盆落とさないの!!」
果林が慌てて駆け寄るも、うささまはすでにくるくる回転中。 その横で、咲姫が元気よくお出迎え。
「ごしゅじんさまっ!おかえりなさいっぴょんっ!」
「語尾が迷子だよ咲姫……!」
「えっ、ぴょんじゃないの!?メイドってぴょんって言うんじゃないの!?」
「誰の影響受けたのよ……」
一方、紗綾はというと――
「……はい、注文は“しゅわしゅわミルク”と“うさちぁん特製おやつ盛り”ですね。かしこまりました」
「紗綾だけ普通に有能……!
「うさちぁん、てんしだから~~~!」
そう叫んだうささまは、くるりと回って――
「おっとっとっと……あれ?おぼんが……」
ガッシャーン!
「うささまァァァァァ!!」
果林の悲鳴が店内に響く。 床には、見事にひっくり返った“しゅわしゅわミルク”と、うささまの足あとがくっきり。
「うさちぁんの……しゅわしゅわが……」
「それ、私が朝から泡立てたやつなんだけど!? もう……!」
「だいじょぶだいじょぶ、うさちぁん、もういっかいふぃ~ってやるから!」
「“ふぃ~”じゃないの!泡立て器使って!」
その横で、咲姫が元気よくお客さんにお辞儀していた。
「ごしゅじんさまっ!おかえりなさいましっぴょんっ!……あれ?“ましぴょん”って変?」
「変だよ!語尾が“ましぴょん”って何!?」
「でも、かわいくない?かわいいよね?ねっ?」
「……まあ、かわいいけど……」
「やったぁ~!じゃあ、咲姫は“ましぴょん”でいくねっ!」
「やめてとは言ってないけど、やめてほしい気持ちはある……」
カウンターの奥では、紗綾が黙々とコーヒーを淹れていた。 姿勢は完璧、動きは静かで美しい。 ただし、表情はいつも通りの無表情。
「……“萌え”って、こういうので合ってるのかしら」
「うん、なんか違うけど、逆にアリかも……」
「うさちぁん、つぎは……おきゃくしゃんに、あいじょーこめて、オムライスにおえかきするぅ~!」
「えっ、うささま、それは私が――」
「かりんちぁんは、みてて!うさちぁん、いま、しゅごいのかくから!」
うささまは、ケチャップを手に取ると、オムライスの上に勢いよく――
「うさちぁん、みててね……うさちぁんの、かお~~~~」
ぐにゃぐにゃぐにゃっ。
「……うささま、それ、顔?」
「うん!うさちぁんの、えがお~~」
「……なんで眉毛が三本あるの?」
「うさちぁん、よろこびすぎて、まゆげふえたの~」
「そんな進化ある!?」
そのとき、店の扉が開いて、新しいお客さんが入ってきた。
「いらっしゃいましぇ~~~~~~ うさちぁんていへ、ようこそぉ~~~~~~」
「……え、ここ喫茶店ですよね?」
「はいっ!うさちぁんが、しゅじんこうの、めいどきっさですっ!」
「主役って言っちゃった!?」
「おきゃくしゃん、なにたべるぅ~?うさちぁんのてづくり、たべるぅ~?」
「えっと……じゃあ、コーヒーと――」
「はいっ!しゅわしゅわミルクですねっ!」
「いや、言ってない……!」
「うさちぁん、いま、こころでよんだの~」
「読心術!? メイド喫茶ってそんなハイテクだったの!?」
お客さんが戸惑う中、咲姫が勢いよく登場。
「ごしゅじんさまっ!こちら、うさちぁん特製“しゅわしゅわミルク”でございますっぴょんっ!」
「えっ、また“ぴょん”!? ていうか、さっき落ちたやつじゃ……」
「だいじょぶですっ!これは“二代目”ですっぴょんっ!」
「二代目って何!?」
「うささま、ちょっと落ち着いて!お客さん困ってるから!」
果林が慌てて駆け寄るも、うささまはすでに“しゅわしゅわミルク”を両手に持って、くるくる回転中。
「しゅわしゅわ~♪ しゅわしゅわ~♪ うさちぁんの、まほうのしゅわしゅわ~♪」
「それ、こぼれるってばぁぁぁぁ!」
店の片隅、カウンターの奥。 紗綾は静かに、コーヒーを淹れていた。
「……ふぅ」
目の前では、うささまがテーブルクロスにくるまって転がり、 咲姫は“ぴょん”の語尾を試行錯誤しながらメニューを読み上げ、 果林はお冷やをこぼして床を拭いている。
「……これ、営業って言えるのかしら」
ぽつりと、誰にも聞こえない声。 でも、その口元には、かすかな笑み。
「まあ……悪くないけど」
カップに注がれたコーヒーから、ふわりと湯気が立ちのぼる。 その香りは、どこか甘くて、やさしかった。




