短話:うささま感謝祭⑤「うささま、呑みすぎて千鳥足」
「うさちぁん、まだのめるぅ~~~~~!!!」
そう叫んだうささまは、盃を両手に掲げたまま、ぐるんとその場で一回転。 そして――
「おっとっとっとっとっとっと……ぴたっ」
……止まれなかった。
「うささま、足がもつれてる!危ないってば!」
果林が慌てて駆け寄るも、時すでに遅し。 うささまは、ふにゃっとした笑顔のまま、ふらふらと前のめりに――
「うさちぁん、そらとけっこんするぅ~~~!」
「しないで!空と結婚しないで!!」
ドサァッ。
「うさちぁん、ぜったいまっすぐあるけるもんっ!」
そう言いながら、うささまは両手を広げて、どっしりと立ち上がった。 が、次の瞬間――
「……あれ? ちがう、地面がうごいてる……?」
一歩、ふらっ。 二歩、ぐらっ。 三歩目で、なぜか真横に進み出す。
「うささま、それ横!横に歩いてるよ!」
「ちがうよぉ~!これは……うさちぁんの、しんがたあるきぃ~!」
「新型ってなに!? それ、ただの千鳥足だよ!」
果林のツッコミもむなしく、うささまはふらふらと進み―― 見事に、焚き火のまわりをぐるりと一周。
「うさちぁん、まわってるぅ~!うさちぁん、地球になったぁ~!」
「地球じゃない!止まって!止まってぇ!」
「うさちぁん、さいごに……たいせつなこと、いいます……」
ぴた、と止まったうささまは、ぐるぐるの目をしながら、両手を広げた。
「みんなぁ~~~……だいすきぃ~~~~~……」
そのまま、ぱたん。
「……寝た!?」
咲姫が駆け寄り、紗綾が毛布をそっとかける。 果林は、うささまの盃を回収しながら、ため息をついた。
「……まったく、最後まで全力なんだから」
焚き火の火が、ぱちぱちと音を立てる。 夜空には、まんまるの月。 その下で、うささまはすやすやと、幸せそうに眠っていた。




