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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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短話:うささま感謝祭⑤「うささま、呑みすぎて千鳥足」

「うさちぁん、まだのめるぅ~~~~~!!!」


そう叫んだうささまは、盃を両手に掲げたまま、ぐるんとその場で一回転。 そして――


「おっとっとっとっとっとっと……ぴたっ」


……止まれなかった。


「うささま、足がもつれてる!危ないってば!」


果林が慌てて駆け寄るも、時すでに遅し。 うささまは、ふにゃっとした笑顔のまま、ふらふらと前のめりに――


「うさちぁん、そらとけっこんするぅ~~~!」


「しないで!空と結婚しないで!!」


ドサァッ。


「うさちぁん、ぜったいまっすぐあるけるもんっ!」


そう言いながら、うささまは両手を広げて、どっしりと立ち上がった。 が、次の瞬間――


「……あれ? ちがう、地面がうごいてる……?」


一歩、ふらっ。 二歩、ぐらっ。 三歩目で、なぜか真横に進み出す。


「うささま、それ横!横に歩いてるよ!」


「ちがうよぉ~!これは……うさちぁんの、しんがたあるきぃ~!」


「新型ってなに!? それ、ただの千鳥足だよ!」


果林のツッコミもむなしく、うささまはふらふらと進み―― 見事に、焚き火のまわりをぐるりと一周。


「うさちぁん、まわってるぅ~!うさちぁん、地球になったぁ~!」


「地球じゃない!止まって!止まってぇ!」


「うさちぁん、さいごに……たいせつなこと、いいます……」


ぴた、と止まったうささまは、ぐるぐるの目をしながら、両手を広げた。


「みんなぁ~~~……だいすきぃ~~~~~……」


そのまま、ぱたん。


「……寝た!?」


咲姫が駆け寄り、紗綾が毛布をそっとかける。 果林は、うささまの盃を回収しながら、ため息をついた。


「……まったく、最後まで全力なんだから」


焚き火の火が、ぱちぱちと音を立てる。 夜空には、まんまるの月。 その下で、うささまはすやすやと、幸せそうに眠っていた。

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