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短話:うささま感謝祭④「紗綾、ほろ酔い気分」
「……にぎやかね」
焚き火の灯りが、紗綾の横顔をやわらかく照らしていた。 少し離れた切り株に腰かけて、彼女は静かに盃を傾ける。
「咲姫の団子、いい香りだったな……。うささま、もう三本目食べてたけど」
くす、と笑って、もう一口。 しゅわしゅわ酒の泡が、舌の上で弾ける。
「……あ、これ、けっこう効くかも」
頬がほんのり熱い。 耳の先が、じんわり赤くなっているのに気づいて、そっと手で隠した。
「紗綾~!こっちきてぇ~!うさちぁんと、ぐるぐるするぅ~!」
「……ぐるぐるは、遠慮しとく」
「えぇぇぇぇ~!? さやちぁん、のんでるのにぃ~!」
「飲んでるから、行かないの。転ぶから」
「うさちぁん、ころんでもたのしいよぉ~!」
「……それは、うささまだけよ」
紗綾は、くすくすと笑いながら、もう一口。 ふわりとした気分が、胸の奥まで広がっていく。
「……でも、こういうのも、悪くないかもね」




