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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.51 はじめての脅威

集落の空気は穏やかだった。 子どもたちの笑い声、畑を耕す音、風に揺れる洗濯物。 咲姫たちはその光景に、どこか胸が温かくなるのを感じていた。


果林は団子を抱えたまま、 「ここ、いいところだね~。団子屋さんもあるかな~?」 と、のんびりした声で言う。


咲姫は笑いながら、 「団子のことばっかりなのです~」 と、くすくす笑った。


紗綾は猫を抱きしめ、 「……風が静かです。とても落ち着いていますね」 と、穏やかに言った。


風花は優しく頷く。 「民の暮らしは、風が柔らかいねぇ。踊りたくなる風だよ」


風音は目を細めて、風の流れを読む。 「……でも、さっきから“跳ねる風”が混じってる」


咲姫が首をかしげる。 「跳ねる……?」


風音は短く答えた。 「……“何か”が近づいてる」


その瞬間だった。


畑の向こうから、 バサッ! と、草をかき分ける音が響いた。


子どもが叫ぶ。 「お母さん! なにか来た!」


女性が咲姫たちの方へ駆け寄る。 「オグマさん! 助けて!」


オグマはすでに動いていた。 腰の武器に手をかけ、集落の外れへ向かう。


咲姫は胸がどきどきして、 「な、なんなのです……?」 と、震える声を漏らした。


果林は団子を抱えたまま固まる。 「も、モンスター……?」


紗綾は猫を抱きしめ、 「……風が乱れています。危険です」 と、静かに言った。


風花は咲姫の肩に手を置く。 「大丈夫。私たちは後ろにいよう。風はまだ味方だよ」


草むらから現れたのは、 背丈ほどの小型モンスター だった。


牙をむき、唸り声を上げる。 民間人たちは悲鳴を上げて逃げ惑う。


咲姫は思わず後ずさった。 「こ、こわいのです……!」


風音が低く呟く。 「……あれは“森の外れ”に出るタイプ。弱いけど、民には脅威」


オグマが前に立つ。 「下がってろ」


モンスターが飛びかかる。 その瞬間――


ドンッ!


オグマの拳が、モンスターの動きを一撃で止めた。 地面に叩きつけられたモンスターは、動かなくなる。


咲姫は目を丸くした。 「つ、強いのです……!」


果林は団子を落としそうになりながら、 「オグマさん、すごい~……!」


紗綾は静かに頷く。 「……優しい人ですが、強い人ですね」


風花は微笑む。 「民を守る風だねぇ。いい風だよ」


風音は風の流れを読み、 「……まだ来ない。今日はこれで終わり」 と、静かに言った。


モンスターが倒れ、集落に再び静けさが戻る。 民間人たちはオグマに感謝し、 咲姫たちは初めて“外の世界の危険”を知った。


咲姫は胸に手を当てて、 「……こわかったけど、でも……守られたのです」 と、小さく呟いた。


風花が優しく微笑む。 「うん。守られたね。風も、オグマも」


風音は風を感じながら、 「……明日は、もっと遠くへ行く風」 と、静かに言った。

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