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ひげがゆれるとき  作者: ねこちぁん
3章~【咲姫編】風の記憶、影の願い

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ep.48 風が落ち着く前に

太陽が傾き始め、町の影が長く伸びていく。 昼の騒ぎはひとまず落ち着き、冒険者たちは焚き火の周りで息を整えていた。


咲姫は、昼の緊張がまだ残っているのか、 「なんか……胸がどきどきするのです」 と、胸に手を当てていた。


果林は団子を焼きながら、 「昼の風、すごかったね~。でも、今はちょっと落ち着いた気がする~」 と、ほっとした声を漏らす。


紗綾は猫を抱いたまま、夕風の流れを読むように目を細めた。 「……落ち着いたように見えて、まだ“何か”が残っていますね」 猫も耳をぴくりと動かし、同じ方向を見つめる。


風音は静かに頷いた。 「……重い気配は遠ざかってない。むしろ、近づいてる」 その声は淡々としているのに、どこか緊張を含んでいた。


風花は焚き火の火を整えながら、優しく言った。 「大丈夫。風はまだ乱れてないよ。怖がる風じゃない」 その柔らかい声に、咲姫の表情が少し和らぐ。


冒険者たちのリーダー格が、こちらに歩み寄ってきた。 「昼は助かった。……だが、まだ終わっていない」 その顔には疲れと、わずかな焦りが混じっていた。


風音が静かに問いかける。 「……“足跡の主”は、どんな人?」


冒険者は一瞬だけ言葉を詰まらせ、 「……強い。とにかく強い。だが悪い奴じゃない。問題は――」 と言いかけて、風の音にかき消された。


その瞬間、 地面の奥から“重い足音”がひとつ、響いた。


咲姫がびくっと肩を震わせる。 「い、今の……!」


紗綾は猫を抱きしめ、 「……来ますね」 と、静かに言った。


風音は風の流れを読むように目を閉じ、 「……明日、風が変わる」 と呟いた。


風花は焚き火の火を見つめながら、 「誰が来ても、まずは迎えるだけだよ」 と、優しく微笑んだ。


夕風がひとつ、長く鳴った。

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