ep.47 冒険者たちのざわめき
昼が近づくにつれ、町の外れは少しずつ騒がしくなっていった。 冒険者たちが集まり、荷物をまとめたり、地図を広げたり、武具の点検を始めている。
咲姫はその様子を見て、 「なんか……みんな忙しそうなのです」 と、きょとんとした顔で呟いた。
果林は団子の串をくるくる回しながら、 「冒険者って、いつもあんな感じなのかな~。なんか、慌ただしい~」 と、のんびりした声で言う。
紗綾は猫を抱いたまま、冒険者たちの動きを観察していた。 「……何か、探しているようにも見えますね」 猫も同じ方向を見つめ、耳をぴくりと動かす。
風音は風の流れを読むように目を細めた。 「……風が跳ねてる。誰かが焦ってる気配」 その言葉に、風花が優しく頷く。
「焦りの風は、踊りにくいねぇ。でも、悪い人たちじゃなさそうだよ」 風花は踊り子らしい柔らかな声で言い、鍋の蓋を軽く叩いた。
冒険者の一人が、こちらに気づいて駆け寄ってきた。 「すまない! この辺りで“重い足跡”を見なかったか?」 息を切らしながら、必死の表情で尋ねてくる。
咲姫は首をかしげた。 「足跡……? 朝、なんか風が変だったのです」
風音が静かに補足する。 「……重い気配は確かに近い。まだ姿は見えないけど」
冒険者はその言葉に目を見開いた。 「やっぱり……! あいつが近くにいるのか……!」
周囲の冒険者たちもざわつき始める。 剣を握り直す者、仲間に合図を送る者、緊張が一気に走った。
果林は団子をもぐもぐしながら、 「なんか……大変なことになってきた~?」 と、のんびりした声で言う。
風花は咲姫の肩に手を置き、優しく言った。 「大丈夫。怖がらなくていいよ。風は、まだ私たちを守ってくれてる」
咲姫は小さく頷いた。 「……うん。なんか、わかるのです」
昼の光の中で、風がひとつ跳ねた。 冒険者たちのざわめきは、これから始まる“何か”を予感させていた。




