ep.1 目を覚ましたら、草の上でした
はじめまして。 異世界転生ものを書いてみたくて、思い切って投稿してみました。 魔法が使えるようになる話ですが、いきなり強くなったりはしません。 ちょっとずつ、言葉を覚えて、魔法を学んでいく感じのゆるい成長物語です。 初心者ですが、楽しんでもらえたらうれしいです!
「名もなき道」
目を覚ましたとき、佐藤悠真は草の上に寝ていた。 空は広くて、風が気持ちよかった。草の匂いがして、どこか懐かしい感じがした。
「……ここ、どこだ?」
体を起こしてあたりを見回す。見たことのない景色だった。 最後に覚えているのは、病院を出た日のこと。 フリーランスになるって決めて、少しだけ未来に希望を持った。 でもその直後、車にぶつかって――
「……俺、死んだのか?」
そうつぶやいたとき、目の前に白い猫が現れた。 ふわふわの毛に、金色の目。しっぽをゆっくり揺らしている。
猫は、ひとことだけ言った。
「ひげがゆれるとき、それが夜明けだ」
その瞬間、まぶしい光が広がった。 まるで朝日が一気に昇ったみたいだった。
「ぴかー!」
光が消えると、体が軽くなっていた。 でも、何か特別な力をもらったわけじゃない。 ただ、体の奥で何かが目を覚ましたような気がした。
【素養《Arcana感応》が開かれました】 【素養《Oralis理解》が芽吹きました】 【素養《Veritas共鳴》が目覚めました】
それは、魔法を使えるようになったというより、 魔法や言葉を“感じられるようになった”ということだった。
悠真は立ち上がった。 草原の端に、一本の道が伸びていた。 土が踏み固められていて、ところどころに馬の足跡が残っている。 でも、道には名前も標識もなかった。
人がよく通る道じゃないみたいだった。 風が通って、草が揺れて、鳥が飛んでいく。 それでも、道は誰かを待っているように見えた。
「名もなき道か……俺には、ちょうどいいかもな」
そう思ったとき、遠くから音が聞こえてきた。 カラカラ……カラララ……
馬車の音だった。 灰色の馬が二頭、木でできた馬車を引いている。 荷物が積まれていて、護衛らしき人もいる。 前の席には、帽子をかぶった人が座っていた。
悠真は手を振った。 「すみません! ここって、どこですか?」
でも、言葉は通じなかった。 御者が不思議そうな顔をして、護衛が手を伸ばしかける。 悠真はあわてて両手を上げた。
そのとき――
【素養《Oralis理解》が芽吹きました】
耳に、風のような声が届いた。
「旅の者か? こんなところで何をしている?」
言葉が、自然に心に入ってきた。 音じゃなくて、意味が伝わってくるような感じだった。
馬車はゆっくりと、名もなき道を進んでいく。 悠真はその後ろを歩きながら、遠くに見える町を見つめた。 屋根の形も、道の色も、日本とは違っていた。 空には、魔法の光が浮かんでいた。
剣や槍、弓や魔法がある世界。 でも、心はなぜか落ち着いていた。
名もなき道を歩く自分に、少しだけ誇りを感じていた。
そして、彼はまだ知らない。 この道が、やがて王国を変える“始まりの道”になることを。 そして、自分が“猫爵”と呼ばれる日が来ることも――。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました! 悠真が目を覚まして、猫神様と出会って、名もなき道を歩き始めるところまでを書きました。 次回は、町に向かって、少しずつこの世界のことを知っていく予定です。 感想やアドバイスなど、いただけたらとても励みになります。 これからも、のんびり続けていきますので、よろしくお願いします!




