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今日も情シスは恐怖に慄く  作者: 葉柚
真夏の夜の悪夢

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21/37

 プルルルル。プルルルル。


 


 と、そこに安藤さんからの着信が入る。


 どうしたというのだろうか。


 エアコンのスイッチがある場所までは歩いて2~3分のところにある。わざわざ電話をかけてこなくても良さそうなのだけれども。


 それほど緊急事態が発生したということなのだろうか。


 恐る恐る電話に出ると、


 


「……エアコンの電源が切れていたよ。」




 という疲れたような安藤さんの声が耳元に届いた。


 


「えっ?でも、エアコンのスイッチには情報システム部以外は電源を切らないようにって注意書きを貼ってあったはずじゃあ……。」




 そう、サーバールームのエアコンのスイッチは他の部屋のエアコンのスイッチと同じ場所に設置されており、帰宅時に間違えてサーバールームのエアコンの電源まで落としていくことが何度か続いたことがあった。その時に、サーバールームのエアコンの電源は落とさないようにと、エアコンのスイッチのところに注意書きを貼ってあったのだ。


 


「そうだね。注意書きは貼ってあるね。でも電源が切れていたということは、誰かがサーバールームのエアコンの電源を落としたんだと思うよ。ねえ、麻生さん。何時頃にサーバールームの室温が上昇し始めていた?」




「えっと。18時頃からです。」




「そうか。誰かが休日出勤して、帰るときにエアコンの電源を落としていったのは十分考えられることだよね。」




「えっと、そうですね……。勝手に電源を落とすなんて信じられませんが……。」




「うん。そうだね。一応注意書きにはサーバールームのエアコンの電源を落とすときは、情報システム部に連絡するようにとも記載しているんだけどね。」




 安藤さんの声は少し怒っているように聞こえた。


 いつも温厚な安藤さんなのに。


 


「今からそっちに戻るけど、サーバールームの室温が安定してきてからサーバーの電源を入れてくれるかい?」




「はい。もちろんです。」




「よろしく頼むよ。」




 安藤さんはそう言って電話を切った。


 それと同時に安藤さんがサーバールームにやってきた。


 どうやら電話しながら歩いてきたらしい。


 


「お疲れ様です。」




「……ああ。僕はこれから入退館システムの記録を確認するから。」




「あ、はい。」




 どうやら誰がサーバールームのエアコンの電源を落としたのか確認するらしい。


 まあ、確かに誰のせいか特定しないと注意もできないしね。


 しばらくして、サーバールームの室温が安定してきたのを確認すると一台一台サーバーの電源を入れていく。


 


「……中途で半年前に入社してきた磯野君だねぇ。ちょっと磯野君の上司の御手洗さんに電話してみるね。」




「あ、はい。」




 安藤さんの額に青筋が見えたような気がする。


 磯野君というのは第二新卒で入社してきたまだ20代前半の社員だ。


 営業職で入社してきたのだけれども、入社直後からいろいろとやらかしており社内で要注意人物として扱われている人物だ。


 入社一週間もたたずにうっかり社用スマートフォンを紛失したのも彼だし、パソコンに砂糖がMAXに入っているという缶コーヒーを盛大にこぼしてパソコンを故障させたのも彼だ。


 それ以外にも営業先の訪問日時を忘れて休みを取ったこともあった。もちろんお客様先からはクレームがきたとか。まあ、約束をすっぽかしたらそうなるけど。




「……磯野君。また客先とトラブルを起こしたらしくてね。今日、出社していたらしいんだ。御手洗さんが磯野君に電話で確認したらね、エアコンの注意書きは見たけど、情報システム部は休みだから連絡せずにエアコンの電源を切ったって言ってたらしいよ。」




「えっ……。」




「まったく、なんのための注意書きだろうね。エアコンのスイッチ勝手に切ることがないように、スイッチを囲って鍵でもかけておくほうがいいのかなぁ。」




 磯野君の発言には驚きである。


 サーバールームのエアコンの電源を切るには情報システム部に連絡するようにという注意書きをみていたのにも関わらず、情報システム部が出社しておらず連絡がとれなかったので、エアコンの電源を勝手に切ったらしい。


 私は磯野君の言動に呆れてしまった。


 


「まあ、とりあえずサーバーも無事だったようだし……。帰ろうか。とんだ休日出勤になってしまったね。」




「そうですね……。」




 こうして真夏の夜の休日出勤は終わった。


 もちろん、夏休み明けに速攻でエアコンのスイッチを勝手に触れないように、囲いをつけて、さらにその囲いに鍵をつけて勝手に開けられないようにしたことは言うまでもない。



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