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家を出てから一時間とちょっと。
私はやっと会社に辿り着いた。
カードキーをかざして会社の施錠を解除する。
誰も社内にはいないようだ。
会社の中はもわっとした外よりも熱気のある不快な空気が漂っていた。
社内に誰もいない場合は、エアコンを停止させることになっているからだ。
私はサーバールーム付近のエアコンのスイッチを入れた。
サーバールームのエアコンが故障していたとなると、サーバールーム内の室温は50℃近くまで上がっていることだろう。
そんな灼熱の中に飛び込むのはいただけない。せめて周囲の空気を冷やしておきたい。
「……あっついなぁ。」
蒸し暑い空気で額から汗が流れ落ちる。
サーバールームのドアをルームキーで開錠して開け放つと中からは尋常じゃないくらいの熱気が飛び出してきた。
急いで室温計を見ると、室温は49℃まで上昇しており、サーバーからは尋常じゃないくらいのファンの音が聞こえてくる。
通常はサーバールームのドアは締め切っているが、この状態でドアを締め切ることは得策ではないだろう。
ドアを開け放ち、サーバールームよりかは涼しいと思われる廊下の空気をサーキュレーターでサーバールーム内に送る。
「……社内の電気系統は生きているみたいだし、停電によって室温が上がったとは考えられないわね。……じゃあ、やっぱりエアコンの故障なのかしら。だとするとこの時間じゃ修理業者は呼べないし……。とりあえず応急処置として電源を落とせるサーバは落としてしまおう。」
稼働しているサーバーが多いから排熱される空気もサーバーの熱気で熱くなってしまう。
少しでも室温を下げるために、サーバーの電源を落とすことを考えた。
いくつかのサーバーは業務をおこなっていないこの時間に停止させても問題はない。
サーバーにアクセスし、一台一台サーバーの電源を落としていく。
空調が効いていないサーバールームの中はとても暑くまるでサウナにいるようだった。
汗だくになりながらもサーバーの電源を落とし終わったころ。
「麻生さん、大丈夫かい?」
と、安藤さんがやってきた。
電話口ではなにかあったら呼んでほしいと言っていたが、安藤さんもサーバーが心配になってやってきたようだ。
それもそのはずだ。室温は50℃近い異常事態だったのだから。
「とりあえず、サーバーを熱から守るためにシャットダウンしました。」
「そうかい。ありがとう。で、原因はわかったかい?」
「停電は発生していないようです。なので、エアコンの故障かと……。」
まだ出社したばかりで原因の特定までは至っていない。
「……停電での一時的なエアコンの稼働停止だったらよかったんだけどね。そうなるとエアコンの修理かなぁ。念のため、エアコンの再起動してみようか。」
「……はい。」
安藤さんは額の汗をハンカチで拭いながら、ネクタイを緩めた。
休日の夜だというのにわざわざスーツに着替えてきたらしい。真面目な安藤さんらしい。
「僕がエアコンを再起動させてくるから、麻生さんはいつからサーバールームの室温が上昇し始めたのか確認しておいてくれないかな?」
「はい。わかりました。」
私はパソコンを立ち上げると、サーバールームの室温管理システムに接続する。
そこには室温がグラフになって表示されていた。
グラフを確認すると室温が上がり始めたのは18時を回った頃からだった。それまで22℃で安定していたサーバールームの室温が徐々に上昇していき、19時には40℃近い室温になっていたのだ。




