第186話 誘拐事件
長らく体調を崩しています。
今回は短めですがご容赦くださいm(__)m
僕はカルロさんにロゼちゃんが仲間の友達であることを説明。
巻き込みたくないのか、初めは僕たちが話に加わるのを渋っていたカルロさんだが、僕が引く気が無い事に気付くと、大きくため息をついて参加を許可してくれた。
店に慌てて入ってきた青年、トニーさんによると、ロゼちゃんが男に抱えられて連れ去られるのを目撃、現在仲間の1人がその男の後をつけているとのことだ。
それにしても、やけにカルロさんが落ち着いているのが気になる。
普通、自分の娘が攫われたならもう少し慌てるものではないだろうか?
「ふん、どうせ犯人はわかっている、ガラナ商会のやつらだろう。そして要求はそうさな、この店を畳めといった所だろうよ。ということは、今の所ロゼは無事、もちろんあくまで今の所だけだがな」
僕の言いたい事を何となく理解していたのか、カルロさんが自らの見解を述べる。
そして、その拳が真っ赤になるほど固く握られているのを見て、僕は自分の考えの浅はかさを悟った。
「そうすると、今の所は……」
「ああ。チューダの連絡待ちだな」
チューダとは人攫いの後をつけている男の名前のようだ。
会話が途切れ、店の中に静寂が訪れる。
それはひたすら長く感じる待ち時間の始まりであった。
※
――時は少しだけ遡る。
「きゃあーっ!」
通りに少女の耳を劈くような悲鳴が響く。
「おい、馬鹿! 口を押さえろ!」
「わかってるって! くそっ、暴れるな! このガキ!」
すぐさま口を押さえつけられた少女、ロゼ。
しかし、その僅かな時間での叫びを聞きつけた者達がいた。
「悲鳴なの」
「ロゼの声です〜!」
「行くよ!」
それは先程少女と別れたばかりの3人。
既にその足は悲鳴がした方角へと駆け出していた。
「チッ! ガキの仲間か! おい、お前ら。追い払っとけ!」
「「へい!!」」
気絶してぐったりとなったロゼを肩に抱え、男は自らの手下に命令を下す。
そして、人ごみの中に紛れるようにして逃走を図る。
「あっ! 待つです〜!」
「おっと、坊ちゃん嬢ちゃん、ここは通せんぼだ。痛い目に遭いたくなかったら、このまま大人しく家に帰んな」
2人の男が両手を広げるようにしてポンポの行く手を阻む。
「アリア姉〜!」
「許可するの」
そんな短い会話の後、ふと男の視界からポンポの姿が消える。
そして次の瞬間、男は鳩尾に鋭い痛みを感じて蹲った。
「てっ、てめ――」
「遅いです〜!」
ポンポはもう一人の男の拳をするりと躱し、背後から首筋に当身の一撃。
前のめりに倒れた男が動かないのを確認したポンポは、尻尾をふりふりと振りつつ、どうだとばかりにアリアに視線を送った。
「まだなの」
「この野郎!」
痛みから多少復活した男が怒りの形相で剣を抜き、ポンポに向かって振り下ろす。
だが、それさえも難なく躱したポンポは、先程と同じ手法で男の意識を刈り取った。
「簡単です〜♪」
「相手が油断していたからなの。調子に乗らないの」
「わかってるです〜」
本当にわかっているのか不安に駆られるアリアだったが、特にそれ以上は追及しなかった。
なぜなら、先ほど逃げた男を追いかけていたミウが戻ってきたからである。
「ごめん。見失った」
申し訳無さそうにミウが頭を下げる。
「どうするです〜?」といった風に視線を彷徨わせるポンポ。
「まかせてなの」
自信ありげに答えたアリアの目は、倒れていた男たちに向けられていた。
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