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第180話 裏切り?

お待たせしました。

ようやく続きが書けましたので更新いたします。

「カナタっ!?」


 ミウが叫び、立ち上がる。

 だが、ミウが駆け寄るより先に、再びバーラの斬撃がカナタに迫る。


「ふんっ!」


 金属のぶつかる音が鳴り響く。

 バーラの一振りを止めたのはゴームス。

 カナタを守るようにして、仲間である筈のバーラの剣を正面から受け止めていた。


「嬢ちゃん! そっちも気をつけろ!」


 ミウが気配を察知し飛び退く。

 まさに間一髪。

 先程までミウがいた場所に氷の矢が降り注ぐ。

 それを放った相手、それはミウが先程まで治療していたテアロンであった。


「邪魔するなら、容赦しないよ!」


 一刻も早くカナタの元に駆け寄りたいミウ。

 テアロンをキッと睨み、攻撃体制に移行する。


「おい、嬢ちゃん! こいつらはあの煙にやられちまってるだけだ! 出来れば無力化で頼む」


「……それは出来ればの話」


 魔物たちに広範囲魔法を放ったばかりのミサキもいつの間にか参戦。

 表情が読み取りにくい彼女ではあるが、見る人が見れば、その目の奥が穏やかで無い事がわかる。


「があああっ!」


 尋常でない様子のテアロンが獣のような咆哮を上げる。

 再び発現する氷の矢。

 本能で危険を察知したのか、それらはすべてミサキ目掛けて降り注ぐ。


「……無駄」


 スタッフを振りかざすミサキ。

 それと同時に発現した炎は一瞬にして氷の矢を包み込む。

 そして、なお勢い衰えぬそれらがテアロンを襲う。


「お、おい!」


 それを見たゴームスが慌てて叫ぶ。

 その隙をバーラに突かれたようだが、そちらはどうにか回避したようだ。


「……手加減はした」


 見るからに相当なダメージを受けたテアロンが膝から崩れ落ちる。

 その様子は辛うじて半殺しといったところか。


「……ミウ、急いで」


「わかってる!」


 バーラがゴームスの相手をしている隙を縫い、カナタの元に駆け寄るミウ。

 そして、その傷ついた背中に手を差し伸ばすと、淡い光が瞬く間にそれを塞いでいく。


「終わったらテアロンも頼むぞ! それと、こちらのフォローもだ!」


 ミウに向かって叫ぶゴームス。

 

 アリア、ポンポは再び迫りつつある魔物の群れへの対処で手が離せない。

 ミサキはその2人をフォローするため、ミウに後の全てを託す。


「カナタ! カナタ!」


 懸命に治療をするミウ。

 だが、カナタはまだ目を覚まさない。


 一方で、バーラに押され気味のゴームス。

 その身体には無数の細かい切り傷が出来ており、彼女の攻撃を完全にはさばき切れていない事が窺えた。

 早さが売りのバーラに対して、パワー自慢のゴームス。

 その戦闘力は通常ならばほぼ互角なのだが、勢い余ってバーラに致命傷を負わすわけにはいかないゴームスにとってこの戦闘は不利。

 彼に残された方法、それはただひたすらと耐え忍び、救援が来るのを待つということだけだった。


「休んでてね、カナタ」


 ミウは慈愛に満ちた女神のような優しい口調でカナタに語りかけると、彼の上半身をそっと地面に寝かせる。

 そして、火傷を負ったテアロンを手早く縛り上げると、彼の身体を軽く治療した。


「よし! 後は……」


 ミウの視界にバーラとゴームスが映る。

 ミウの目から見ても、ゴームスの限界がそろそろ近い事がわかった。

 その場で詠唱を唱えるミウ。

 態々詠唱したのは狙いを正確につけるため。

 狙いはバーラの足元、彼女の機動力を削ぐことだ。


「チッ!」


 迫りくる真空のカマイタチを続けざまに躱すバーラ。

 だが、それも長くは続かない。

 そしてとうとう、空気の刃は彼女の脚を捉えた。


「くっ!」


 体勢を崩すバーラ。

 そして、その隙を見逃すゴームスでは無い。


「おりゃあああっ!」


 渾身の一撃でバーラの剣を弾き飛ばしたゴームスは、勢いの余勢をかってその首筋に手刀の一撃を加える。

 バーラの膝が折れ、そのまま地面に仰向けに倒れこむ。

 その様子に安堵の表情を浮かべたゴームスは、駆け寄ってくるミウに礼を言う。


「助かった! 危ない所だったぜ!」


「間に合って良かった。それで、ゴームスは何ともないの?」


 バーラを縛り上げながら、ミウは疑問となっていることを問う。

 いつゴームスが豹変しても対応できるよう、体勢を整えながら。


「ああ。俺はある程度ドワーフの血が入っているからな。こういったことの抵抗力はかなりあるんだわ。それよりもお前さんは何ともないのか?」


 時には呪いの武器も扱うことのあるドワーフの一族。

 脈々として受け継がれてきた遺伝子の力が今回彼を救ったようだ。


「うん。抵抗力は強いからね」


 恐らくは女神様の祝福の力だろうが、当然ミウはその事を口にしない。


「それよりも、治療するからじっとしてて」


 ゴームスの身体から見る見るうちに外傷が消えていく。

 彼自身も手持ちのポーションで体力を回復させる。


「すまねえな」


 その言葉には治療の礼以上に仲間たちの失態への謝罪が含まれていた。

 それに対し、気にしないでといった風に首を横に振るミウ。


「それで、彼女たちはどうするの?」


「この戦闘での復帰は無理だからこのまま後回しだな。何せここを切り抜けなきゃ全滅だ」


「それもそうだね。じゃあ、ポンポのフォローを頼める?」


 現在、ミサキが魔法で魔物をかなり減らしているとは言っても、前衛はポンポが1人。

 そして、それはいつ限界が来てもおかしくない。


「任せとけ! 俺は前衛しか出来んしな」


 そんなセリフを残し、ゴームスは魔物の群れに向かって駆けだしていく。


 その時、背後から聞きなれた唸り声がミウの耳に届く。

 それが誰が発したものなのか瞬時にに理解したミウは、再び彼の元に駆けよるのであった。



最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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