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閑話 窮地のパーティー

大変お待たせしましたm(__)m

今回はカナタ視点ではありません。

 アタシの名はバーラ。

 フラワーパークを拠点として活動するDランクパーティー、赤の閃光のリーダーだ。

 メンバーには筋肉馬鹿のゴームス、いつも沈着冷静な魔法職のテアロンがいる。


 この街を拠点として既に3年、得てして時の立つのは早いものだ。

 しかし、ここまで順調にランクを上げてきたアタシたちに今、パーティー結成以来最大の試練が訪れていた。


「お金が……無い」


 パーティー資金の入った魔法の袋を逆さにしても、当然びた一文も出てこない。

 アタシたちが個人的に持っているお金を足しても宿代2日分が精々。

 現在、残りの2人を呼んで宿の一室で話し合いの最中である。


「がっはっはっ! まあ、何とかなるさ。依頼を受ければ良かろう」


 この馬鹿は相変わらず何もわかっちゃいない。


「馬鹿だね、ゴームスは。それが無いから困ってるんじゃないか! そりゃあ街の中の手伝い的な仕事や採取の簡単な仕事ならあるけど、そんなのは1日の生活費の捻出でやっと、武器の手入れや魔法薬だって補充できないんだからね」


「そんなの俺に言われても、難しい事はわからん」


 こういう事はアタシたちに丸投げ、ゴームスの悪い癖だ。


「わからんって、何年冒険者をやってるんだか……。 そもそもアンタ、それは何だい?」


「ん!? 見てわからんのか? これは酒という物だが?」


 ゴームスの近くに転がる大量の酒瓶。

 そして、今この話し合いの時もちびちびとやっている。


「そういう事を言ってるんじゃないよ! 何処にそれを買う金があったんだい? たしかアンタ金欠だって言ってたよね」


「パーティー資金に決まっているだろう。俺自身の金はもう無いんだからな。またいつもみたいに依頼で稼いだら返済すれば良かろう」


 アタシに向かってパーティー資金窃盗の常習犯が事もなげに言い放つ。


「やっぱりアンタが手を付けてたのかー!!」


「うおっ!? 待て、バーラ! 話せばわかる!」


「話は今十分聞いただろう! アンタの欲望しかない理由に納得できるかー!!」


 アタシは目の前の能無し筋肉ダルマに殴りかかる。


「まあまあ、落ち着いてよバーラ。ここで喧嘩しても解決にならないって! とりあえずギルドに行ってみようよ。新しい依頼があるかもよ」


 ゴームスの顔面にグーパンチを一発浴びせたところでテアロンに止められる。

 アタシは深く深呼吸してその怒りを抑えることに努める。


「テアロン、もう少し早く止めてくれよ」


 ゴームスが頬を抑えながら嘆く。


「一発くらい貰った方が良いよ。そもそも悪いのはゴームスなんだから」


 まだまだゴームスに言いたい事(当然、拳での会話)は沢山あったのだが、テアロンの建設的な意見ももっともなので矛を収める。

 アタシだってそれしか無い事はわかる。

 万一まだ適当な依頼が無かったら、低ランクの依頼で食いつなぐか、それとも拠点を変えるか。

 それを決めるのも先ずはギルドに行ってからだね。





「はぁ……」


 ギルドを出たアタシの口から自然とため息が漏れる。


「人数が足りないわね」


 Dランクの依頼はあったのだが、その内容はハニーパインの討伐。

 当然、同ランクの依頼なのだからアタシたちパーティーでも十分に倒せる。

 だが、問題は広い森の中からハニーパインを探さねばならないこと。

 そして、金欠のアタシたちには時間が限られている。

 タイミングの悪いことに友誼を交しているパーティーは皆遠征中。

 こんなことなら誘われた遠征について行けば良かったと今さらながらに思う。


「まあ何とかなる。協力してくれるパーティーを探せばいいんだろう?」


 能天気なゴームスの物言いに、もう一発くらい殴っておけばよかったと後悔。

 誰のせいでこうなったと思っているんだか。


「うーん、まいったね。ここは手分けして細かい依頼でもこなすかい?」


「そうね。それも仕方ないかもね」


 テアロンの意見にアタシは頷く。

 今は偶々中堅どころの依頼が無いだけ、ここを乗り切れば何とかなるかも……。


「うん!? バーラ、あれを」


 テアロンが何かに気がついたようで、その方向を指さす。


「あっ! あの馬鹿!」


 視界に映ったのは、他の冒険者パーティーにからむゴームスの姿。

 恐らくは今回の件が関係しているのだろうけど、筋肉ダルマが若すぎる少年少女のパーティーに迫る映像は傍から見て絡んでいる風にしか見えない。

 しかもアイツは酔っぱらっているから余計に始末に悪い。

 アタシはハリセン片手に無言でその場に駆け寄った。


 スパーンという小気味良い音が鳴り響く。

 振り向くゴームスだが、その行いが迷惑をかけていたのがわからない様子。

 全く世話の焼ける男だ。

 アタシはテアロンに続き、目の前のパーティーに謝罪する。

 いくら相手が新人だろうが、そこら辺はきっちりとしておかないと。



 驚いた!

 聞けば、彼らはアタシらと同じDランクとのこと。

 ひょっとして、これは運が向いてきたのかね。

 それなら――。


「ここ最近は良い依頼が無くてお金に困っているんだよ。ゴームスが強引に声をかけたのは謝るけど、ここは人助けだと思って手を貸してくれると嬉しいな」


 これは天が与えてくれたチャンスと思ったアタシは、迷惑ついでに今の状況を話す。

 この際、お姉さんの魅力で籠絡しようかしら?

 そう言う事は苦手だけど……。


「……近すぎ」


 だが、それは悪手だった様子。

 ならば作戦変更、将を射んとすれば。




 そして、アタシたちは無事カナタたちと共同戦線を張ることが出来た。

 これでひとまずは一安心。

 あとはカナタたちの実力の程を確認しておかなきゃだけど、それは追々道中で見られるだろうしね。

 

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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