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第165話 赤熱病

遅い時間の更新です。

最近は忙しく、更新日がまちまちm(__)m

年末年始に少しストックしたいなぁ……。


「母は病気なんです! 治すには薬が必要で――」


 ニコが一生懸命言葉を捲し立て、事情を説明してくる。

 だが、言いたい事が多く整理がついていないのだろう、その話には纏まりが無くわかりづらかったが、要約するとこういう事のようだ。


 ニコとサチの母は、この地特有の奇病にかかってしまった。

 その病気には普通の治療、更には治癒魔法も効果が無いらしく、治す方法は一つだけ、ある特殊な薬を飲むことである。

 しかし、その薬はどの街にも売られておらず、唯一の手に入れる方法はデング様に会ってそれを貰うこと。

 何処か気になる名前ではあるが、この際それは置いておこう。


 ニコたちが生まれる以前は、そのデング様とやらが村に来て薬を置いていったらしいのだが、何時の頃からか森の奥に引っ込んで、出てこなくなってしまった。

 その森は迷いの森と呼ばれる場所で、今まで何人もの村人や雇われ冒険者が足を踏み入れたが、誰1人として奥まで辿り着けていない秘境。

 それゆえ、現在はその奇病を治す方法が無く、かかったら死に至る病気として認識されているとのことだ。


「お願いします!」


「お願い、助けて!」


 必死に縋りついてくるニコとサチ。

 助けてあげたいところではあるが――。

 いや、人間とは時間感覚の違う氷竜のこと。

 急ぎと言ってもある程度余裕はあるのか。

 ならば――。


「カナタ!」


 急な呼びかけに振り向くとそこにはミウが立っていた。

 

「どうしたの、ミウ?」


「ミサキが……、とにかく来て!」


 僕はミウに手を引かれ、部屋の中へ。

 ニコやサチもそれに釣られて中に入った。




「はぁ、はぁ……」


 布団の中で苦しそうな表情のミサキ。

 その顔には幾つもの赤い斑点が浮かび上がっている。


「……赤熱病」


 ニコが呟く。


「知ってるのかい?」


「はい、母の病気の症状と同じです」


 僕はミサキに近寄りおでこに手を当てる。

 熱もかなり出ているようだ。


「カナタ、苦しそうだよ。治癒魔法も効かないの」


 悲痛の表情のミウが何とかしてと目で訴えてくる。

 アリア、ポンポも心配そうにミサキを見守る。


「……カナタ」


 ミサキは虚ろな目で僕を見つめる。


「ミサキ?」


 僕はミサキに問いかけた。


「……姫は王子の口づけで元気になる……かも……」


 いつもの軽口。

 だが、その口調はいつになく弱弱しい。


 全く、無理をして……。

 僕はミサキの頬に軽く手を当てる。


「ミサキ、待ってて。すぐ治してあげるから」


 ミサキが頬に添えられた僕の手を握り、小さく頷いた。



 僕は改めてニコたちの方に向き直る。


「森の場所、教えてくれないか?」


 ニコは黙って頷いた。



 その後、ニコとサチの母親にも会ってきた。

 但し、会ったと言っても本人の意識は虚ろなのだが。


「お母さん、待っててね。もうすぐ薬が手に入るから」


 ニコとサチが母親の手を握り励ます。

 彼女の症状はミサキと同じ。

 だが、こちらの方が進行しているのが見た目でもわかる。

 ニコから聞いた話から推測するに、恐らくそれほどの時間は残されていない。



「ポンポ、留守を頼む。2日以内に戻らなかったらゴランに連絡を取ってくれ」


 僕はポンポにイデアへの鍵を渡す。


「わかったです〜! 任せるです〜!」


 動けないミサキの護衛と面倒を見る役目にポンポを指名。

 初めは自分も行きたがっていたポンポではあるが、守るのも大事な役目ということで最後には納得してくれた。

 緊急時にはイデアに避難するようにとも言い含めてある。


 そして、目指す森の位置はここからさほど遠くは無く、人の足で半日と掛からない距離であった。

 ユニ助の足ならすぐに入口まで辿り着けるであろう。


「じゃあ、行ってくる! ユニ助、頼む」


「承知!」


 こうして、まだ日の昇らない時刻にも拘らず、馬車は村を出て森を目指すのであった。



 


 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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