第150話 滞在許可
執筆時間が思うように取れず、今回は少々短めですm(__)m
静まり返った部屋で3人の帰りを待つ僕とアリア。
こうしてただ待っているだけというのは時間がとても長く感じる。
「ねえ、アリア」
「ダメなの」
僕が話の内容を言う前に即座に却下される。
その言葉は「めっ!」とでも子供を叱りつけたかのような響きを有していた。
「皆をもっと信用するの」
真面目な顔でアリアに怒られてしまった。
最近はポンポの姉的役割が多い為、こういうアリアは珍しくは無いが、まさか自分が怒られ役になろうとは……。
その分僕へのダメージは大きかった。
もちろん皆の実力はわかっているけど、それでも心配には変わりがない。
アリアはその点、気丈だなぁと思う。
どうやら僕はただ待つのは性に合わないようだ。
でも、ここは我慢しなければいけない場面。
一応頭では分かっているんだけどね。
「帰ってきたの」
アリアが皆の帰りを察知して頬が緩む。
何だ、アリアも結構心配してたんじゃないか。
「ただいまっ! 行ってきたよ!」
初めに飛び込んできたのはミウ。
僕はその白い弾丸を正面から受け止める。
ミウとしては普段と同じことをしているのだろうが、体型が人型になっただけで結構な衝撃だ。
声を漏らしそうになるのを何とか耐える。
「……戻った」
「帰ったです〜」
ミサキ、ポンポも遅れて姿を現した。
皆が無事なようで一安心だ。
「……私も飛び込んだ方が良い?」
「いえ、普通でお願いします」
ミサキの本気半分のセリフを軽く受け流し、僕は強引に話の内容を変える。
「それで――、どうだった?」
「……ええ、収穫はあった」
ミサキがピースサインを出す。
「ミウも頑張ったんだよ!」
「ポンポもです〜」
僕の両脇から褒めて褒めてラッシュが押し寄せる。
「うん。ポンポは頑張ったの」
リクエストに応え、ポンポの頭を優しく撫でるアリア。
その様子は仲の良い姉弟のようだ。
「カナタ!」
「はいはい」
僕は同じようにミウの頭を撫でる。
恰好は人型でも、撫でられることが大好きなのは変わらない。
ふと見ると、ミサキが三角帽を取り頭を控えめに突き出して来た。
どうやら撫でろということらしい。
いや、同い年の女の子に対してそれは少し抵抗が……。
「……差別は良くない」
仕方が無いので少し撫でてみる。
ミサキの髪に初めて触ったが、さらさらで撫でていてとても気持ちが良い。
「……ん、満足」
そして漸く話は本題へと移行するのであった――。
翌朝、僕たちは皆で向かい合って朝食を食べる。
目の前にはスラ坊のお弁当、しかも重箱。
女神様から貰った袋の中では時間が止まった状態で保存可能であり、その中には約一週間分の料理が備蓄されている。
それもあって、前回の夕食のお呼ばれは兎も角、食事については構わないでくれと集落の住人に伝えてある。
もっとも周りにいた彼らのあの態度、断らなくても用意してくれたかどうか……。
「ところでミサキ。今日ここを出るとなると、今後調べるのは骨が折れるよね。どうするの?」
「……その点は心配ない」
相変わらず言葉数の少ないミサキさん。
目の前のおかずを口に放り込み、その味を幸せそうに堪能している。
うん、食事が終わってからにしよう。
そして、事態はミサキの予想通りに動き出す。
「貴方方はこの集落の久方ぶりの客人です。何も無い所ですが、お望みならば一日とは言わず何日でも泊まっていって下さいな」
滞在許可は驚くほどすんなりと受け入れられた。
それどころかむしろ向こうもそれを望んでいたような感じさえある。
「ああ、そうでした。本日は良い獲物が取れましたのよ。また是非夕食をご一緒にいかがかしら?」
ヒミコさんは僕に向かって表情を緩める。
合図と共に男たちによって運び出されてきたのは猪の魔物であるビックボア。
それもかなりの大物で、男たちが神輿のように4人掛かりで台座ごと担ぎ上げている。
何十人に肉料理のフルコースを作っても十分余る量だ。
しかし、そんな驚くべき巨体よりも僕には気になった事があった。
それはビックボアを担いでいる男の内の1人。
名前は知らないが、その顔に僕は見覚えがあった。
記憶違いで無ければ、彼はイデアロードを拠点としてくれていた冒険者。
何故こんな所に――。
「ん!? 何か?」
「あ、いえ。何でもありません」
視線を感じたのだろう。
男の問いに僕はとっさに回答する。
男は興味を失ったかのように再び僕から視線を外す。
外した先にいるのはヒミコさん。
何となくその眼差しは熱い。
「では、また夕食時に人をやります。それでは、楽しみにしていますわ」
静々とヒミコさんは男数人を引き連れて奥へと引っ込む。
先程の冒険者もその中に含まれている。
さて、今回の件に関係あるのだろうか。
勿論、たまたま彼が移住しただけと言う可能性だってある。
ギルドから貰った行方不明者リストは名前とランク、性別のみ。
こうなると、彼の名前を知らなかったことが悔やまれる。
「……任せて」
ミサキに何か考えがあるようだ。
こうなったら軍師ミサキに全てを委ねよう。
作戦立案は相変わらずのおんぶに抱っこだ。
そして、陽が赤く染まった頃、僕たちは再び屋敷へと赴くのであった。




