閑話 とあるミウの一日
今回はミウ視点です。
きょうはいつもより早く起きた。
寝ざめはスッキリ!
その分、何かいい事があるといいな。
横ではアリアがまだ寝ている。
ミウは起こさないようにそっとベットを出た。
気遣いって大事だよね。
ドアを開け目的地にれっつ・ごー!
目指すはもちろんカナタの部屋。
カナタが朝一番に見るのはミウの顔。
それだけはミサキにも譲れない。
カナタの部屋のドアにはカギがかかっていなかった。
少し前まではミサキが侵入するとかでかけていたみたいだけど、今はもう大丈夫みたい。
だからミウが入れるんだけどね。
こんもりと盛り上がったベットが見えた。
やっぱりまだ寝ている。
そ~っとベットの頭部分に駆け上がって準備万端。
さあ、いっくよ〜。
ジャンプ一番、カナタ目掛けてダイブ!
「うわっ! 何だ!」
カナタが起きたみたい。
大成功!!
眠そうな目をこすっているカナタと目が合う。
「ああ、ミウか。――出来ればもう少し優しく起こしてくれると嬉しいんだけど……」
そんなこと言って、ちょっとやそっとじゃ起きないことを知ってるよ。
今はそれよりも大事な事があるんじゃないかな。
「カナタ、朝の最初はあいさつからだよ!」
わかっていないカナタに注意する。
「ああ、ごめん。おはよう、ミウ」
「うん。おはよう、カナタ!」
嬉しくて再びカナタに飛びつく。
カナタは優しく受け止めてくれて、頭を撫でてくれた。
一日の始まりはこれじゃなくちゃね。
今日はカナタと二人でイデアロードを散歩。
カナタは視察って言ってたけど、どっちでもいいよね。
ミサキは何か用事があるみたい。
服の買い物って言っていたけど、カナタにはまだ見られたくないみたい。
「……後のお楽しみ」
そんなことをカナタに言っていたから、もしかしたらスケスケの寝巻じゃないかな。
ミサキだったらありえるよね。
アリアはタロジロと一緒に散歩だって言ってた。
「カナタさんと二人で行って来ればいいの」
そう言ってミウを送り出してくれた。
きっと、たまには二人で――と思っていたミウの気持ちを察してくれたんだと思う。
アリアはとても良い子。
ミウも見習わなくちゃ。
「領主さま、こんにちは」
大通りを通っていると、たくさんの人に声をかけられる。
それはきっとカナタが良い領主だってことなんだと思う。
ミウも鼻が高いよ。
「ん? どうしたの、ミウ」
頭の上でもぞもぞと動いていたのが気になったみたい。
ミウはカナタに返事をする。
「何でもない。それよりお腹すいたよ」
「よし、じゃあ屋台で軽く買って、食べながら行くか」
「賛成〜!」
近くにいい匂いのする屋台があったから、そこで買うことにした。
お肉、野菜、魚が網で焼かれていて美味しそう!
「今日は魚介がお勧めですよ!」
「へえ、珍しいですね。じゃあ、それを二本ください」
「へい、毎度あり!」
焼けたお魚をカナタから受け取って食べてみた。
スラ坊のほどじゃないけど、十分美味しいね。
食べた後はカナタが布で口を拭ってくれた。
うん、カナタ優しい。
「きゃっ!」
遠くで何か悲鳴が聞こえた。
向こうでお婆さんが倒れていて、男の人がこちらに駆け寄ってくる。
「返して!」
お婆さんの物を奪って逃げているみたい。
カナタが一生懸命つくった街でそんなことするの、許せないよね。
ここはミウが何とかしなきゃ!
魔法を発動、やっつけるよ!
「うわっ! 何だ!」
最初は悪者を囲うように魔法を放ってみた。
足止め完了! 上手くいってる。
後はどどめの一撃、もちろん手加減はするけどね。
でも、それは必要なかったみたい。
カナタが素早い動きで悪者を捕らえてくれた。
やっぱりカナタは頼りになる。
ミウとの連携もバッチリ! さすが相棒だね!
お婆さんにはお礼を言われてお菓子をもらった。
やっぱり良いことをすると良いことが返ってくる。
カナタとの楽しい散歩が終わって、ミウだけ先にイデアに帰る。
一緒にいても良かったんだけど、カナタが「すぐ終わるから先に行って待ってて」と言っていたので仕方がない。
ミウも我慢が出来る大人になったってところを見せなくちゃ。
別荘の庭に出ると、ミウの匂いを嗅ぎつけたのか、遠くからタロジロが駆け寄ってきた。
「「お姉ちゃん!、お帰り!」」
タロとジロはミウの事を『お姉ちゃん』って呼ぶ。
身体はミウより大きいけれど、甘えてくるのがとても可愛い。
「はぁ、はぁ……。ミウちゃん、おかえりなの」
タロジロに遅れてアリアも駆け寄ってきた。
息を切らしているところを見ると、タロジロの急ダッシュに置いてかれたみたい。
タロジロにはもっと落ち着くように言わなくちゃ。
「アリア、タロにジロ。ただいま」
その後、みんなで庭の芝生に寝転がって今日の楽しかったことを話した。
今、ミウはとても幸せ、こんな日が毎日続けばいいな。
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