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閑話 主演男優賞と監督賞

続きが書けましたので更新しちゃいます。

 キマウさんから報告を受けた僕たちは、ミサキに案内されるまま地下牢へと辿り着いた。

 そこでミサキが何の脈略も無い言葉を口にする。


「……ゴーレムを作って」


「え!?」


 何の事か良くわからず、僕はミサキに聞き返した。


「……捕らえた人の身代わり」


「似せて作れば良いの?」


「……ええ」


「だけど、見た目には自信ないよ」


「……それは上手くやる」


 ミサキに何か考えがあるようなので、とりあえず地属性魔法の使える僕とミウでゴーレムの作成を始めた。

 捕らえていた二人の顔を思い出しながら顔部分を固めていく。

 彼らの顔を見ながら作りたいところなのだが、それは無理というものだ。

 先程のキマウさんの話の内容、それは捕えていた二人が自決したという報告だった。

 それも示し合わせたように二人同時に、だ。

 どうやら口の中に毒のようなものを仕込んでいたようで、見張りはそれに気づく間もなかったとのこと。

 自分の命をどう使おうと自由なのかもしれないが、こちらとしては何とも後味の悪い結果だ。


 次第にゴーレムが形になっていく。

 先入観無しにみても、外見の出来栄えに些か不安が残る。

 言うまでも無く、僕とミウは芸術家では無い。

 遠目から見れば人間に見えなくもないが、やはり無理があると思う。

 だが、そんなゴーレムを見てミサキは満足そうだ。


「それで、どうするの?」


 そんな満足そうなミサキに質問する。


「……尋問する」


「誰を?」


 ミサキの言っていることが今一わからない。


 早速四人の作戦タイムが始まる。

 ミサキの立てた作戦、それはゴーレムを使ってグラシャス子爵とヘーデルネン男爵に尋問の様子を見せるというものだ。

 そして、彼らに自白まであと少しであると匂わせる。


「……黒なら必ず始末に動く」


 なるほど、敵が動くのを待つわけか。

 二人の貴族が潔白ならばそれはそれ、時間制限無く改めてじっくりと調べれば良いってことだね。


「でも見た目がこれじゃ不味くない?」


 僕は自作のゴーレムを見ながら問題点を口にする。


「……ミウに頑張ってもらう」


「ミウに?」


「……幻術」


 見た目に関してはミウの幻術頼りのようだ。

 軽い認識妨害ならば問題ないだろうとのこと。


「ミサキちゃん、すごいの!」


「……えっへん」


 作戦の出来を褒めるアリアに対し、ミサキが得意そうに胸を張る。

 いや、ちょっと待てよ……。


「それって、僕の演技力も大事になるよね」


 そんな僕の言葉に対し、ミサキは問題無いとばかりに一言。


「……目指せ、主演男優賞」


 いや、そんなものこの世界には無いよね……。





 そして翌日、僕は2人の貴族を連れて予定通り地下牢へと足を運ぶ。

 牢の奥には例のゴーレムが椅子に腰かけ、その脇には警備兵オークが立っている。

 そして椅子の下に何気なく存在している小さな木箱。

 ――中は窮屈だろうけど、少しの間だけ我慢して欲しい。


「いきなり魔法を詠唱されると困るので、猿轡をさせています」


 警備兵が予定通りのセリフを僕に投げかける。

 その言葉に僕は無言で頷いた。

 今のところは怖いくらいに順調だ。

 何とも言えない緊張感が僕の身体を支配している。


「それで、こんな所に連れてきてどうしようって言うんだい? あまり意味あることには思えないんだけど」


 グラシャス子爵が僕に問いかける。

 僕は緊張感を隠し、自分は役者だと心の中で呟きながら笑顔で返答する。


「いや、対面すれば何かわかるかと思ってね。それだけさ」


 グラシャス子爵のいら立ちが伝わってくる。

 さあ、ここからが本番だ。



 僕の合図に従い、警備兵は尋問を開始する。

 そのセリフに合わせてゴーレムが首を振る。

 操作はもちろんミウの担当だ。

 順調に茶番とも言うべき尋問が行われていく。


 そして、いよいよ最終段階。

 警備兵が懐から米粉を取り出し、ゴーレムの口部分に流し込む。

 僕はそれを魔法の粉と称して二人に説明する。

 現在の僕は自白の為なら薬の投与も厭わない領主だ。

 薬の出所は今までほぼ未開発だったピューレ山脈の名前を出しておけば問題ない。


 ミウがゴーレムを動かし、その効果の程を少しだけ見せつける。

 案の定、グラシャス子爵は驚いているようだ。

 ヘーデルネン男爵もその口を大きく開けている。


 そして、ゴーレムを気絶した風に見せかける。

 僕はそれが規定事項のように振る舞い、薬が完全に効くまで一日かかることを二人にほのめかす。

 上手く言えたかが不安だが、彼らの表情を見た限りでは大丈夫だろう。






「う〜っ、狭かった」


 木箱を開けると同時にミウが飛び出してきた。

 小さい身体で懸命に伸びをしている。

 そんな中、後から地下牢へと入ってきたミサキとアリアが合流する。


「……ここまでは成功」


「成功なの!」


「う〜ん、どうかな?」


「問題ないと思うよ」


 木箱の中でやり取りを聞いていたミウが太鼓判を押してくれた。

 だが、ここからが本番だ。

 気を抜かないようにしなくては……。


「来るかね?」


「……犯人なら間違いなく」


 その言葉を信じ、僕たちは夜に向けて準備を始めた。

 

 先ず、警備兵のゴーレムを入り口に配置する。

 自ら動く事が出来る自立式だが、単純命令しか受け付けず使い勝手は悪い。

 しかし、今回に限ってはそれで十分だ。

 

 そして本当の見張り、庭にいる妖精たちをお菓子で懐柔する。

 初めは「夜は寝るものよ!」とか言っていたのだが、スラ坊のお菓子をチラつかせたら態度が一変した。


「まかせといて!」


「大船に乗った気でいいよ〜」


「約束、忘れないでね!」


 彼女たちなら物理的に人目に付く事は無い。

 戦闘能力は皆無だが、見張りとしてこれ程優秀な存在は無いだろう。

 

 


「カナタ! 入っていったよ!」


 妖精たちからの連絡を受け、僕たちは警備兵と供に急いで建物に向かう。

 入り口ではゴーレムが倒れている。

 その姿を横目に見ながら、僕たちは建物に突入した。


 そして現在、六人の侵入者たちが僕たちの目の前で武器を構えている。


「……予定通り」


 ぼそりとミサキが呟く。

 僕は油断すること無く、その前に進み出て剣を構えた。 

 

ついでにミウさんには裏方賞です^^

気が向きましたらランキングもお願いしますm(__)m

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