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第28話 ボナパルト王城の戦い①~リクソン・ベタンクールの采配


僕の咆哮で数十人の兵士が戦闘不能になり、相手の戦力は3人に絞られた。


王国の一級魔術師『絢爛氷河』のプスキニア・メルセンヌ


帝国の十傑第8位『紅熊』エゴン・レヴァンドフスキ


帝国の十傑第9位『紅猫』ヒルデガルド・ラーム


対するこちらは4人が戦力だ。


ボナパルト王家都督 リクソン・ベタンクール都督


皇国皇軍 アウレリオ・ブラン・ベラルディ准将


帝国海軍 ベアトリーチェ・ドラゴスピア少尉


そして僕の4人


こちらの方が数的有利ではあるが、こちらはシャルル王とリタさんという非戦闘員を護衛しなければならない。


それに相手は王国の一級魔術師と帝国の十傑2人だ。


総合的な戦力は向こうの方が上かもしれない。


戦闘を始める前に、ベタンクール都督がアウレリオ准将とビーチェに対して、敵の3人を見据えて、振り返りもせずに聞く。


「ベラルディ准将とベアトリーチェ少尉に確認のため聞く。あの2人の武術師の実力は相当なものだ。皇国で言うとファビオ・ナバロ中将やマリオ・バロテイ少将と同格だろうね。それでも相対することはできるかい?」


「……くっ…正直妾には荷が重いでしょう…時間稼ぎが精いっぱいかと…」


悔しそうにビーチェは言う。


「私も腕に自信はあるが、ファビオやマリオと同格と言われると、防衛に手一杯だろうね」


アウレリオ准将も苦笑いをしながらベタンクール都督に答えた。


「…やはりそうか…王家の暗殺を企てている奴らだ。『生け捕り』ができれば最高だが、難しそうだね。ここは『撃退』を最低目標に、できれば『討伐』を目標とするよ」


なるほど


戦闘の勝利条件を明確にしておくのか。


そして全員に共有する。


これなら戦闘中の連携もより円滑になるだろう、


「そして相手だけども、最優先目標はあのプスキニア・メルセンヌだ。彼女の氷魔術は非常に範囲が広い。僕が彼女を押さえている間に、シリュウ准将がエゴンを討伐してくれ。ベアトリーチェ少尉とベラルディ准将はシャルル王とリータ殿下の護衛を共同で頼む。一旦ヒルデガルドは無視する」


「む、無視!?大丈夫なのですか?」


帝国の十傑を無視するという衝撃の方針に驚く僕


ビーチェとアウレリオ准将も「こいつマジかよ…」みたいな顔でベタンクール都督を見ている。


「問題ない。もしシリュウ准将とエゴンが対決し、僕とプスキニアが対決すれば、ヒルデガルドは間違いなくシャルル王とリータ殿下の命を狙いに来るだろう。帝国の武術師は一対一の戦いを神聖視する傾向にある。エゴンの方にヒルデガルドが加勢することはない。そしてプスキニアとヒルデガルドが共闘することもないのはあの二人の様子から見て取れる。そしてヒルデガルドは任務に非常に忠実な軍人だとの情報を得ている。フリーになれば暗殺対象に一目散に向かっていくだろうね」


な、なるほど


すごい分析だ…


そして帝国の十傑の性格まで把握している。


これが王家の軍を預かる都督としての資質なのか。


「流石は王国最高の軍司令…ベタンクール都督だな。見事な分析だ。私はそれに従おう」


「わ、妾も依存ありません!」


2人ともベタンクール都督の策に賛同している。


しかし僕はその策を飲めないでいた。


その策だと僕はビーチェと離れて戦闘し、ビーチェの万が一のことがあれば守ってあげられない。


ビーチェも立派な軍人だし、僕がいつでも守ってあげられなくなるとは覚悟していたが、いざこの時が来ると僕は踏ん切りがつかないでいた。



すると僕の不安を見透かしたかのようにアウレリオ准将が僕に声を掛けた。



「案ずるな、シリュウ准将。私がベアトリーチェも守ってみせる」


「ア、アウレリオ准将…?」


「ベアトリーチェには私の都合で迷惑をかけたからな。ここで恩を返すとしよう。私は皇軍准将『不壊の盾』アウレリオ・ブラン・ベラルディだ。守ることに関しては私が皇国一さ」


そう言って僕を安心させるように言うアウレリオ准将…


その目は真っすぐと僕を見ていて、必ず守るという意志が強く伝わっていた。


「…わ、妾ももう軍人じゃ!シリュウと共に海軍に入ると決めた時からこのようなときが来るとわかっておった!妾に構わず、あの十傑とやらを倒してくりゃれ?」


ビーチェが精一杯に手を震わせながら言う。


「……シリュウ准将、僕達の不手際で奥方を危険にさせてしまって申し訳ない。文句は後でいくらでも聞こう。しかし今この場だけは、()()()()()()


「……!」


ベタンクール都督の「信じ合う」という言葉に、僕は目を覚ました。


そうだ。


僕はビーチェを守ってくれるというアウレリオ准将も軍人としての責務を全うしようとしているビーチェも、この状況を采配してくれるベタンクール都督も信じ切れていなかったのではないか。


僕はもう軍人だ。


そして将軍なのだ。


仲間を信じられず、何ができる!?


この戦闘の開始直前の今になって、旅立つ日の前日のじいちゃんの言葉を思い出した。


『人は一人では生きていけない。口で言うのは簡単じゃがこのことを身に染みて感じるためには、まず人の輪に入ることが必要じゃ』


そうか


こういうことか。



僕は気合を入れるため、地面を目いっぱい踏みしめた。


ドオオン!


「……失礼しました!…アウレリオ准将…任せました。僕はあの大男の首を取ってきます」


「頼んだ。君はこの場の誰より強い。その槍で貫いてこい!」


「妾は大丈夫じゃ!必ず王と殿下を守って見せるのじゃ!」


「心強いねぇ…皇国軍人はやっぱり優秀だな……さあ行くか!」


ベタンクール都督の合図を皮切りに、僕はエゴンに突撃し、ベタンクール都督はプスキニアに向けて火の魔術を放ち、アウレリオ准将とビーチェはシャルル王とリタさんを守るように布陣した。



さぁ行くぞ。 


熊狩りだ。





リアナ「ポアンカレ家はもうすぐそこね。王城のこんな近いところに屋敷を構えるなんてさすがは公爵ね。……パオ…どうかしたの?」


パオ「……王城の方で、複数の魔力反応だにー。それもかなり大きいろんね」


リアナ「え!?ということは魔術師同士の戦闘?お、王城で!?」


パオ「戻るよ、リアナ。嫌な予感がする」


リアナ「パオ、かっこいい……(わかったわ!)」

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