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【閑話】アウレリオ・ブラン・ベラルディの独白〜公爵家の孤児


物心がついた時から普通の家じゃないと思っていた。


私は母と2人で広大な敷地の端に建てられた小さな小屋で暮らしていた。


母はいつも忙しく、メイドの仕事をしていて、私は物心ついた時には母の仕事を手伝っていた。


大量の洗濯物を小さな手で一生懸命擦ったり、庭の雑草を朝から晩まで抜いたり、いつまでも続くと思われた屋敷の廊下の雑巾掛けをした。


普通の子供なら同じ年の友達と公園で遊んだり、玩具で遊んだりするのだろうが、私にとっては屋敷が公園であり、掃除道具が玩具であった。


今思えば忙しくも楽しい日々であり、私の人生の中で最も幸せな日々だったのかもしれない。


なぜならこの時期はまだ母が健康に見えて、笑いが絶えない毎日だったからだ。


しかしそんな日々は長くは続かなかった。


私が8歳の時に、母が体調を大きく崩し、働きに出られなくなった。


どうやら年若く私を産んだ母は、私を出産した後から身体を悪くしていたようだ。


それに幼い私を養うために、体に鞭を打ってメイドの仕事を続けていた。


それの限界がついに来たのだ。


私は母の分まで働こうと身の丈に合わない仕事を沢山したが、所詮は子供のできる範囲であり、母の代わりなど到底務まらなかった。


母が働けなくなって3月が過ぎた頃、とうとう私達は屋敷から出ていくよう通達された。


それもその時初めて会った実の父であるベラルディ公爵に


その男は齢13の母をほぼ手籠のような形で孕ませ、あまつさえ追い出そうとしていたのだ。


大人になってからベラルディ公爵のしでかしたことの酷さを知った時には、腹が煮え繰り返る思いを常に持つようになってしまった。


しかし当時の私はただ母と共に家を追われるだけの無力な子供だった。


それでも私は母を守るために、ベラルディ公爵に懇願した。


「ぼ、僕は!これから誰よりも凄い人間になります!ベラルディの家のために!だから僕達を…母を捨てないでください!」


メイド達に混ざって仕事をしていると、公爵家の内情についての噂が良く私の耳に入った。


その中にはベラルディ公爵とその弟のベラルディ侯爵の子はどの子も優秀でなく、ベラルディ家の未来は暗いというものもあった。


だから私が誰より優秀なベラルディの子供になって母を守るのだ。


私は母からベラルディ公爵の子だと聞かされていた。


そしていつも母は私に謝るのだ。


「ママが平民だから……リオに辛い思いをさせてごめんね…?」


そんなことはない。


私は母の子供で良かったと心底思っている。


いつも朗らかで優しく、私を常に思ってくれているこの世で唯一の家族


そんな母を私の他に誰が守るのか


私しかいない。


そんな私の決意が伝わったのか、ベラルディ公爵は不敵に笑いながら了承した。


「ふっ、面白い。貴様もベラルディの血を引くならばその素質を見せてみよ。貴様が有用であるうちはこの小屋に住んでもよかろう」


そこから私の地獄が始まった。


武術に魔術に学問と、ありとあらゆる英才教育が私に施された。


今までメイド業の手伝いしかしてこなかった私には世界がまるっきり変わってしまい、楽しくない未知の体験に満ち溢れていた。


しかし私がここで挫けては母が追い出されてしまう!


その想いで喰らいつくように英才教育のしごきに耐え続けた。


すると2年もすれば、ベラルディ公爵の私に対する評価が改まり、分家の四男として迎え入れると言われた。


分家であったのは、平民の血を引く私を本家の子供にしたくないという華族至上主義のベラルディ公爵が認めなかったからだ。


しかし私はどうやら他のベラルディの子より見込みがあるようで分家の末子として社交の場に出るよう指示された。


今まで身体が強くなく、病気がちだったため、表に出なかったという設定を課せられ、アウレリオ・ブラン・ベラルディが誕生したのだ。


そこからも更に英才教育は続く。


だが私は母の待遇のため、武術も魔術も学問も全て努力し、ベラルディ家自慢の子になろうと必死だった。


私が良い結果を出せば、食事や医療など母の生活の待遇が目に見えて良くなる。


しかし逆に期待された結果を出さなければ母は容赦なく冷遇される。


ベラルディ公爵は、母の待遇を人質に私に結果を求めたのだ。


その状況は今も変わらない。


皇都の華族学園を主席で卒業し、皇国騎士団に入団して更に出世し、皇軍選抜試験に合格し、皇軍准将にまで上り詰めた。


しかしそれでも私は非力なのだ。


ベラルディ公爵の指示通りに、日々皇都の社交の場に顔を出し、華族との人脈構築に身を注ぐ。


ファビオ中将からは軍人でありながら政治ごっこに精を出し鍛錬を疎かにする愚か者と謗られたが、その通り過ぎて反論する気も起きない。


実際私は、皇軍のレア・ピンロ少将の持つ情報網に触れるために皇国騎士団から派遣された諜報員のようなものだからな。


ゆえに重要な議題の時は私を外す皇軍3将の対応は全くもって正しいのだ。


そんな孤立した状況でも皇軍准将という立場は、私個人にとっては渡りに船だ。


なぜなら武功を立てると新たな華族を立ち上げることができる。


華族を立ち上げて、母と共にベラルディから独立するのだ 


武功以外で華族を立ち上げるには国家に一定以上の財物を献上しなければならないが、私と母の資産はベラルディ公爵に差し押さえられているため、私は武功を立てるしか道はない。



ベラルディ公爵の覚えめでたいように、平民嫌いの仮面を付けて、どれだけ周りの人に忌み嫌われようが、私は母と自由になるその時を諦めていないのだ。





ビーチェ「アウレリオ准将……そんな過去があったとは…これは評価をまるっきり改めんといかんのう…」


シリュウ「……うぅ…うう(泣)お母さんのために努力するなんて…健気な人じゃないかぁ……」


リアナ「パオ?ちょっと胸も痛くなってきたの…ここら辺さすってくれない?」


パオ「……まずよだれを拭うろんよ……」

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