【閑話】パオっちのプロポーズ大作戦
烈歴98年 5月14日 海軍本部
リアナさんとパオっちの騒動から早3日
僕とビーチェは海軍入隊に際しての幹部の方との顔合わせと、研修も兼ねて早朝から海軍本部に来ていた。
午前中は、海軍本部の幹部である各局長達と顔合わせをして、そこから海軍組織についてのオリエンテーション、軍規や最低限の海の知識に関する座学をビーチェと共に受けていた。
午後からは演習場で僕とビーチェが海軍兵士達と仕合をして、交流をした。
兵士の方は、僕がインペリオバレーナを討伐した現場に居合わせた人もいて僕の実力を知っている人も多かったが、ビーチェの剣技の凄さに驚いている人が多かった。
ビーチェは出会った頃から武術の腕はかなりあったけども、普段から僕の稽古に付き合ってくれるから日々剣技も上達している。
「…おいおい…サザンガルドの剣闘姫と聞いていたが想像以上だな…」
「ベアトリーチェ少尉だっけ?あの人も十分に猛者の域じゃないか…」
「それに可憐だ……シリュウ准将が羨ましいな…」
ふふーん!
僕の奥さん凄いだろ!
僕はドヤ顔で胸を張りながらビーチェの仕合を見守っていた。
ちなみに僕の方は最初の方で数人相手をしたところで、誰も相手をしてくれなくなった。
「……と、とんでもねぇよ……槍捌きが見えないって…」
「気が付いたら死角を取られていた…」
「運よく受けれたが、槍の威力が重すぎる…」
「……あの方が負ける姿が想像できんな…」
いや、そんな人を化け物みたいに
僕としてはもっと体を動かしたいのだけども、兵士の人は皆ビーチェと仕合するための列に並んでいた。
寂しい…
交流仕合を終えたところで、今日の海軍での予定は終わったので、パオっちに会いに少将執務室へビーチェとともに訪ねていったのだが、パオっちの他にも意外な人物がいた。
「あれ?レアさんじゃないですか、こんにちは」
「レア少将、ご機嫌麗しゅう」
「シリュウ君にベアトリーチェさん、どうも、ちょっと珍しくパオに呼ばれまして」
「おお!シリュウっちにベアちゃん!ちょうどいいところに!研修が終わったらオイラから声を掛けようと思ってたぬん!」
パオっちとレアさんは執務室のソファに腰掛けどうやら何か話をしていたようだ。
「どうしたの?パオっち」
僕が問いかけるとパオっちは珍しくうんうんと悩んでいる様子だった。
「いやほらこの前リアナを泣かせちゃっただろん?ドレスを贈って機嫌を直してもらったはいいものの、このままじゃまた同じことになるような気がして、レア姉ちゃんに相談をしていたおろろん」
ほう?
リアナさんのことか
「リアナを離しちゃダメですよ、パオ。あの子なしではあなたは生きていけないでしょうに」
レアさんがぶっきらぼうに言う。
「う~ん、それはそうなんだもん…ずっと一緒にいてもらうにはどうしたらいいのもか」
パオっちの発言にレアさんもビーチェもため息をつく。
あまりにも単純な解決方法を思いつかないパオっちに幻滅している。
「そんなの簡単じゃないか。リアナさんと結婚すればいいんだよ」
僕はあっけらかんと言う。
僕の発言にレアさんもビーチェも目を見開き何か言いたそうだが、僕はもう我慢できなかった。
僕の発言に、パオっちも少し面を食っているけど、真剣な顔つきで考えている。
「…そうぬん……?」
「そうだよ」
僕はパオっちの真剣な問いかけに答えた。
するとパオっちは僕に聞いた。
「シリュウっちは、ベアちゃんと結婚するって決めた時どんな気持ちだったろん?」
「単純だよ。ずっとこの人と一緒に居たいと思った。離したくないってね」
僕の答えにパオっちははっとした表情になった。
「そうか…そうだんぬん……オイラは…ずっと…」
パオっちはまた考え込む。
「パ、パオが結婚についてこんなに真面目に考えているなんて…感動です…!」
「…パオ少将…はやる時はやる男じゃろうか…?」
女性陣は考え込むパオっちの成り行きを見守っている。
あとレアさん、感動のハードル低くない?
考え込むパオっちにビーチェが追撃を加える。
「あ~パオ少将、リアナ少尉にドレスを着て前夜祭に一緒に出て欲しいって言ったじゃろ?」
「うむ、ベアちゃんの助言通りにリアナにそう言ったぬん」
「うむ、言い忘れていたが、晩餐会の場にドレスを着た女性を同伴させることは、男女の仲であることを公言するようなものなのじゃよ」
ビーチェがニヤつきながら言う。
いや絶対わかっててパオっちに言わなかったよね。
「ぎょっ!…そ、そうだったのかぬん……」
「そうじゃそうじゃ、今ごろリアナ少尉はパオ少将から男女の仲であることを告白されたような気持ちになっておるじゃろうのう…」
「…あわあわあわ…オイラは…そうとは知らず…なんてことを…」
僕の最強参謀に嵌められた哀れなパオっちは、自らの行動を省みていた。
「…ふむ…外堀から埋めて逃げ道をなくす…見事な誘導です」
皇軍の頭脳とも呼ばれるレア少将にも褒められちゃった。
「ふむ……どうする?パオ少将…いやどうしたい?」
ビーチェの問いかけに、パオっちはまた考える。
「オイラは…」
少し考えた後で、パオっちは腹を決めた様子になった。
「オイラはやっぱり、リアナとずっとに一緒にいたいのね。なら結婚するしかないぬん」
おお!
パオっちがついに決意した!
パオっちの決意に、レアさんとビーチェは手を取り合ってキャーキャー言っている。
仲いいな、君達
「そうと決まれば、プロポーズですよ!パオ!善は急げです!」
「いやレア少将!プロポーズはやはりムードがある良い雰囲気のシチュエーションで…!」
女子陣が盛り上がっている。
あとビーチェもプロポーズは雰囲気の良いところの方が良かったんだね…
僕はエクトエンド樹海の泉の小屋でプロポーズしたっけ……すみません…
僕は反省の意味も込めて部屋の隅っこで三角座りをした。
「シ、シリュウや…妾はシリュウのプロポーズも好きじゃよ…?妾はとても嬉しかったのじゃ!だから拗ねるでないぞ…」
ビーチェが駆け寄って慰めてくれる。
「どんなプロポーズだったんでしょう……気になる…」
レアさんが気になっているようだが、ビーチェの慰めで復活した僕は気を取り直して言う。
「ま、まぁいいじゃないですか!それよりパオっちのことですよ」
「そうじゃ!そうじゃ!で、どのタイミングで切り出すかが重要じゃのう」
「オイラは今すぐでもいいけど…」
「ダメですよ。あなたたちは10年来の仲で、常に一緒にいるから、こういうイベントは特別感を演出しましょう。ちょうど前夜祭に一緒に出るのでしょう?その時に言ったらいいじゃないですか」
レア少将がパオっちにそう提案する。
「確かに、皇宮でのバルコニーでのプロポーズなど、まるで物語のようじゃ。これにときめかぬ女子などおらぬじゃろうて」
「皇宮…バルコニー…ならあそこがいいろん…」
「いい場所を知っているの?パオっち」
「いい場所というか思い出の場所じゃもん。皇宮の第二大会場の脇のバルコニーろん」
「なるほど、第二大会場は軍学校の卒業パーティーの定番の会場ですね。パオの時もそこでしたか」
「そうろん、あの日、リアナと約束をしたんだっけな…」
「ほう!素晴らしい!なら前夜祭の際に、折を見てリアナ少尉をそこに呼び出すんじゃ」
「むん!オイラやるよ!」
「あとプロポーズなら指輪は外せませんね」
「それに花はどうじゃろ?リアナ少尉の好きな花は知ってるかや?」
「それならわかるぬん、青色のカーネーション、黄色のスターチス、緑色のアナベルだろんね」
スラスラと答えるパオっち
僕ら3人は皆驚いて目を見開いた。
「パ、パオ…よく即答できましたね…」
レア少将がパオっちに聞く。
「10年近く一緒にいるろんよ?それに一緒に住んでもう長いじゃもん。いつも食卓にリアナが綺麗に飾っているしねん」
流石に付き合いが長いからわかるのか。
それに好きな花の色まで
でもその色って
僕ら3人は目を見合わせて同じことを思う
(((パオ(っち)(少将)の髪の色じゃん……)))
「……ろん?」
不思議がるパオっちを他所に僕達はパオっちのプロポーズ大作戦の詳細を詰め始めた。
成功するといいな。
まぁきっと成功すると思うけど。
シリュウ「パオっちのプロポーズが成功したらリアナ少尉が義妹になりますけど、どう思います?」
レア「どうも何も、あの子には本当に感謝していますよ。パオが学園生活を問題なくやり遂げたのはリアナのおかげです。それに海軍に入隊してからも甲斐甲斐しくお世話を焼いてくれて…あの子以外にパオの相手は務まりませんよ」
ゾエ「それにリアナが流行り病で1週間程休んだ時期があってねぇ…代わりの補佐官を臨時で配置したけど、もうそれは目も当てられなかったよ。臨時の補佐官が泣きながらリアナの復帰を待ち望んでいたのさね」
シリュウ「やっぱり、お互いにお互いが最高のパートナーなんだなぁ」




